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第149話

祈織とはなんとなく元に戻った しかし祈織は前にも増して 俺にべったりとくっついて来るようになった ただ、俺らの間にはなんとなくもやもやした物が少し残っていた 『じゃあ、送迎行ってくるから帰ったら一緒にお昼行きたい』 「俺今日昼頃プレゼン行ってくるから遅くなるぞ」 『いい。他の仕事して待ってるし』 「分かったよ、我慢できなくなったら先に食ってなよ」 『うん』 と、祈織が頷いたのを確認して送り出し 椅子に座ったタイミングだ コンコン、と社長室のドアがノックされ すぐに返事をする 忘れ物か?とドアを開けると 「しゃちょ、あの」 「……あきらくん、入るか?」 「はい、あの」 「うん」 「コーヒー、持ってきました」 と、俺の前にコーヒーを置いてくれて 居心地悪そうに目線をキョロキョロと動かす 「ありがとう」 「い、いえ」 「どうした、」 「えっと、いおりんの、こと」 「…それはもういいから」 「いや、オレのせいでケンカしたんでしょ」 「もう終わったから」 「いおりん、悪くないんです」 「そ、んな、わけ、ねえだろ、」 ぐ、とあきらくんは手を握っていた 「いおりん、途中でやめるっていったけど、オレ無理やりして……社長に言われたくなかったらってオレ、脅していおりんに無理やりしたから」 「…どういう経緯があっても、もう、済んだことだろ」 「ごめんなさい、もう、しないから」 「…だから、俺がどうこういう話じゃねえから。もういいって」 「…………社長、それ本気で言ってんすか」 「何がだよ」 しかしあきらくんは何故か大きなため息を吐いた 「………なんか、謝って損した」 「は?」 「もし、社長がいおりんの事大事にしないなら、オレいおりんで遊ぶからね?いおりん頭悪いからちょうどいいし」 「は?なんだよそれ、やめろ」 「ほら、嫌なら、いおりんの事ちゃんと大事にしてたらいいじゃないですか」 「………大事にしてるに決まってんだろ。これ以上どうしろって言うんだよ」 いくら俺があいつのこと 大事にしても 結局は俺だけなんだよ あいつが欲しいものを全て与えている 好きなだけあいつを甘やかして あいつが欲しいものならなんだって与えるつもりでいた ただ、最近の祈織からは それで満足していないという感じがヒシヒシと伝わってきていた 「んー、社長って、いおりんのこと、大好きなくせになんか大人ぶってますよね」 「は?」 「まぁ、もう一応謝ったんで仕事戻ります。減給とかは無しですからね」 と、あきらくんは出ていってしまった そんなんする訳ねえだろ、パワハラだし と、ツッコミをいれつつも ようやく落ち着いてきていた感情が またもやもやとしていた 「くそ、どうすりゃいいんだよ」 ◇◆ プレゼンから戻ると すぐに社長室に入ってきた祈織 「飯食ってないよな、行こうか」 と、声を掛けたが 祈織は下を向いたままだった 「どうした?」 と、俺が聞くのとほぼ同時に 胸の当たりに軽く衝撃を感じ祈織が抱きついてきたのがわかる 『………』 「なに、どうした」 『帰ってこないかと思った、』 「は?なんで?仕事だから戻るだろ、普通に」 『だって、連絡しても、返ってこないし、既読つかないし』 と、俺の胸に顔を埋めながら言うから どんな表情をしているか見えないが その声は少し震えていた 「…あー、携帯。壊したんだよ。お前に言うの忘れてたな。悪い」 『そうなの、』 「あぁ、」 『びっくり、した、』 と、ゆっくり俺から離れ 顔を見上げてくるから ポンポンと頭を撫でてやる 「あれだろ、ハートも送ってねえじゃん」 『…だから、よけい、心配になった』 「悪かったって。ほら、飯いこ。お前腹減ってんだろ」 『…うん、お腹空いた。ナポリタンのとこいこ』 「あーそうだな。久しぶりにいいな」 『うん、』 「お前まだ時間大丈夫だよな?」 『平気、今日はもう送迎無いから』 「そっか、じゃあちょっとゆっくりしよ。俺も結構腹減ってるし」 『…うん、』 「トイレ大丈夫か?」 『大丈夫、いこ』 と、祈織は俺の手を少しだけ引っ張った 「あぁ、」 『…きょうへい、』 「ん?」 『携帯、いつ壊したの?』 「あぁ、一昨日」 『そうなんだ、どうしたの?』 「落とした」 と、自分で投げて壊したくせに 余裕無さすぎて恥ずかしいから少しだけ嘘をつく 『いく?ショップ、使えないと困るでしょ』 「まぁ一応社用携帯あるからヤナギとかにはそっちに連絡するように伝えてるし。今度の休みでいいかな」 『ヤナギさん、』 と、少し目を泳がせる祈織 「お前一緒に住んでるから連絡会社にいる時しかしないだろ?言うの忘れてたんだよ」 『えっと、うん』 「携帯変えるのってめんどくせぇよなあー。バックアップ復元とか」 『おれ、やってあげる、』 「あぁ、頼む。お前の方がそういうの得意だもんな」 『うん、』 と、2人で会社を出て 歩く間も祈織は少しだけ元気はなかったから 『きょうへい、』 「どうした?」 『おれ、クリームソーダ、も飲みたい』 「あぁ、お前クリームソーダいつも飲んでるもんな、あそこの店」 『うん、クリームソーダ、』 「頼もうな、クリームソーダ」 『うん、……きょうへい、』 「うん、」 『…なんでも、ない』 と、また寂しそうな顔をした 俺がこんな顔させてんだよなぁ 昨日の今日だしな、 時間が解決してくれるのを待つしかないのか、

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