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第150話
きょうへいは
たぶん、許してくれたけど
おれはずっと寂しくて
ずっと不安だった
だって、やっぱりおれは
きょうへいのペットでしかなくて
なのに、悪い事をしたから…
今回はきょうへいはおれのこと捨てなかったけど
今度もしまた何かしてしまったら
今度こそ捨てられるかもしれないって
ずっと不安がもやもやと残っていた
だから、前よりきょうへいに甘えてしまう事も増えていて
きょうへいを試しているみたいで自分でも嫌になる瞬間がある
『きょうへい、おしっこ、』
「…んー、あー、濡れたな、」
寝ていたきょうへいを起こして
告げると
きょうへいは眠そうに目を擦りながらも
起き上がってくれて
濡らしたベッドの状況を確認する
『うん、』
「お前また最近おねしょ増えてきちゃったな」
と、きょうへいはいつも怒らないで
おれの汚した物をきれいにしてくれる
『おねしょじゃない、起きてた』
「起きてたの?間に合わなかったか?」
『…目、覚めたけど、そのまました』
「だめだろ、ちゃんとトイレ行ける時は行くって約束してんだから」
『…ごめんなさい、』
「なんで行かなかったんだ?」
『…だって、1人で行くの嫌だったんだ』
「そしたら俺起こしてもいいし。アヒルだってそこ置いてんだろ?」
『…ごめんなさい、もうわざとしないから』
「あぁ、シャワー浴びといで」
『…タオルで、して欲しい』
「タオル?びしょびしょになってんだからシャワーの方がお前楽だろ?」
『だって、1人で行きたくない、』
「じゃあしてやるから待ってな、一緒にシャワーいこ」
と、きょうへいはおれの濡れた服をぬがして
濡れてしまったシーツごと全部まとめてくれた
そしてそれを持って一緒にお風呂まで連れていってくれる
わがままばっかりできょうへい嫌になってるかも、と心配になってきょうへいの顔を見てしまう
しかし、
「ふっ、」
と、きょうへいは笑って
おれの頭をぐしゃっと撫でた
『わ、な、なに』
「情けねえ顔してんなって」
『だっ、て』
「ほら、キレイにするぞ」
と、シャワーを持って
裸のおれにゆっくりとお湯をかけてくれる
「情けねえちんぽ。ほら、お湯かけてやるから」
『ちんぽ、なさけない?』
「元気になってねえなって。しょぼんってしてる」
『漏らしたから』
「かわいいなぁ、お前」
何それ、このタイミンでって思ったけど
『おれ、かわいいでしょ、』
と、きょうへいの言葉を肯定した
おれのことかわいいなんて言うの
きょうへいくらいなのに
「自分で言うなって」
と、きょうへいはまた笑って
手で身体を洗ってくれる
きょうへい、今日はよく笑ってくれる
「なんで1人で行けなかった?怖い夢でも見たか?」
『子供じゃねえし、ちがうけど、』
「俺と離れたくなかった?」
『うん、きょうへいと一緒がよかった』
「心配にしなくても大丈夫だ、俺だってお前から離れたくねえし」
『本当?』
「あぁ、本当」
『おれ、きょうへいに大事にされてんの、嬉しい』
例えペットとしてでも
きょうへいにずっと大事にされたい
だから、もう悪い事、しちゃダメなんだ
ほら、キレイになったと
身体を拭いてくれて
わざとおもらししたからお仕置でおむつを履かされてしまう
『おむつ嫌なのに』
「シーツ濡らしたのお前だろ。今日はおむつな」
寝室に戻って
ペットに横になると
きょうへいは肩まで毛布をかけて
寝かしつけるようにぽんぽんと背中を撫でてくれる
きょうへいの事試すみたいに
わざとわがままいっぱい最近してる
なんか、おれ、やっぱりすげえめんどくせぇ
おれって本当にどうしようもない
と、もやもや考えていたら
ふときょうへいと目があう
どうしたのかなと首を傾げると
手を掴まれて引っ張られ
ちゅぽん、と口から抜かれる
「こら、指しゃぶり」
『……だって、』
無意識だった
「指しゃぶりすんの赤ちゃんだぞ」
『……おむつだって、赤ちゃんじゃん』
「じゃあ赤ちゃんでいるのか?」
と、聞かれ
首を振る
おれだって、本当は
きょうへいに赤ちゃんなんて思われたくない、
赤ちゃんでも、ペットでもなくて
ちゃんと志波祈織として見て欲しいんだ
『指しゃぶりしてねえし』
「うそつけ」
と、きょうへいは少し笑った
やっぱり、今日はよく笑ってくれる
『指しゃぶりしないからキスだけして』
と、指しゃぶりしていた手を後ろに隠してオネダリすると
おれの背中をよしよしと撫でていた手が
おれの後頭部に回って
少し引き寄せられる
そして、
ちゅ、としっかり触れるキスをしてくれて
「ほらもう寝な。おやすみ」
『うん、おやすみ』
きょうへいは
もう、おれが悪いことをしたこと
多分、許してくれた
というか、
もうあの事には触れないことにしていて
前みたいにおれのことを甘やかしてくれる
もしかしたら前以上かも
優しくしてくれるし
おれがして欲しいことをしてくれる
お願いしたらなんでもしてくれるし
わがままいっても怒らない
でも不安で仕方ないんだ
だって、あの日から……
きょうへいはおれの名前、呼んでくれないんだ
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