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第161話
なんか乳首がむずむずする、
昨日弄りすぎたせいかも、
朝シャワーを浴びて着替えようとしたら
乳首がずっとむずむずしていて
なんか、シャツ着てても擦れてチリチリするし
ぺろん、とシャツを捲って確認すると
いつもより赤いし腫れてる気もする
やっぱり触り過ぎたのかな
乳首大きくなっちゃったらどうしよ、
でもこんな事、きょうへいに言うのもはずかしいし
気にしないようにしてても
やっぱりシャツを戻すと先っぽちりちりする
と、その時
ふとベッドサイドに置いてあったオロナインに気がつく
塗ったらチリチリすんの治るかな、と
蓋を開けて少量指にとって乳首に塗る
くるくると周りから塗っていくけど
『んっ、』
なんだこれ、ぬるぬるして変な感じする
ぬるぬるして、よけい乳首の感覚が敏感になった気もする
どうしよ、とティッシュでそれを拭き取ろうとするが
ティッシュで擦るのもいやですぐに拭き取るのをやめる
『っ、んん、どうしよ、』
もう触りたくない、とどうしようもできなくて
なんにも乳首に擦れないようにしたい、と
何か他の薬とか、と薬が入っている棚を漁る
『これ、』
と、棚の中から見つけた
絆創膏を手に取る
とりあえず今日一日はこれで、と
乳首に絆創膏を貼って見たが
んん、これはこれで気になるかも、
やっぱり剥がそうかな、と思った時だ
「祈織ーどこいんの?そろそろ行くぞー」
と、リビングの方できょうへいの声が聞こえる
『わかった、もう行くから』
と、すぐにそのままシャツを戻して
ワイシャツのボタンを閉じてリビングに向かう
「何してた?」
『着替えてただけ、』
「ネクタイは?」
『あ、忘れた』
「ほら、持っといで。今日はスープ食ってくか」
『うん』
すぐにネクタイと荷物を持ってきょうへいの後を追う
「今日午後から新製品の方に行くけどお前も一緒に来れるか?」
『うん、行ける』
と、話しながら車に乗って
シートベルトをすると
『…、』
なんか、シートベルトが乳首に当たって変な感じする
「…つか、やっぱりお前、腫れてんな」
と、きょうへいが眉間にシワを寄せながら言う
『腫れてる、?なんで、』
なんで、乳首
腫れてんのわかったのって思ったけど
「昨日ずっと泣いてたもんな」
『泣いて…あぁ、目?』
「あぁ。瞼。ちょっと腫れてる」
『だから泣いてねえって』
「嘘つくなって」
『泣いてないって』
あぁ、そっち、と少しだけ瞼を擦った
そんなのどうでもいい
おれの瞼なんてきょうへい以外誰も見ないから気にしなくていいのに
ちょっと目が開きにくい感じするけど
そんなんより乳首が擦れる事の方がおれにとっては問題だった
仕事始めたら
気になんなくなるかな、と窓の外を見てため息を吐いた
「…大丈夫か?なんか調子悪い?」
『別に悪くない』
「そうか?また具合悪くなったらすぐ言えよ?つかおしりは?痛くねえ?」
『あぁ、おしり。忘れてた。痛くない』
「そっか、ならいいけど」
『うん』
「寒くなってきたから体調おかしかったらすぐ言えよ?季節の変わり目いつも体調崩すし」
『いつもじゃないじゃん』
「…体調悪いと隠そうとするだろ」
『でも今日は元気だから大丈夫』
「ならいいけど。つか今日外いくけど大人パンツだろ?」
『そうだけど、なんで?』
確か今日は製品の方にまた行くって言ってたよな、あそこ会社からちょいかかるし駐車場も少しだけ離れてるんだよなあ
「おむつ履かせるの忘れたと思って」
『会社で履きたくないって』
「寒くなってきたのにまだヒートテック出してなかったよな。おしっこ我慢しにくくなるから気をつけろよ」
『きょうへいはおれのおもらしばっかり気にしすぎ』
おもらし、おれだって気をつけてるし
大人だからきょうへいにおもらし気にされたくないのに
わざとじゃないおもらしは情けないし
『おれ大人だよ』
「赤ちゃんじゃなかったか?」
『ちっがうし』
と、きょうへいを睨むと笑われてしまう
「おもらししなくなったら大人って言ってやるよ」
もう大人なのにな
25歳だし
「まぁ祈織はまだ大人じゃなくて俺はいいけど」
『おれもう25だよ?きょうへいは25の頃何してたの?』
「あー、どうだろ。普通に昔の会社で働いてたぞ。ヤナギと会ったのはその頃か」
『…ふーん、』
やっぱりヤナギさん、ずるい
おれの知らない頃のきょうへいを知ってるんだ
完全におれの勝手なヤキモチだけど
「まぁ良く考えれば俺も25の頃はガキだったな」
『きょうへいガキだった頃とかあんの?』
「当たり前だろ。そん頃はまだまだ仕事だって普通にサラリーマンだったし」
『へぇえ、童貞だった?』
「んだよ、いきなり」
『別に。気になって』
「まぁ…ちげえけど」
『ふーん』
「聞いてきたくせに怒んなよ」
『…おれだってえっちした事あるし』
きょうへいとしてるし
「だったらいいだろ、突っ込むのも突っ込まれんのも」
でも、童貞だし
だからきょうへいはおれのこと子供扱いすんのかな
『きょうへい初めていつしたの?』
「どうでもいいだろ、そんなん」
『おれのだけきょうへい知っててずるいじゃん』
「…高校生の頃」
『誰と?』
「誰とって。当時の彼女と普通にだよ」
『あの、…合コンした人?ヤナギさんが』
「ちげえちげえ。あいつはすぐ振られたから」
『ふーん』
きょうへい、振られたんだ
というか、きょうへい
当たり前かもしんないけど
おれと会うまでは普通に女の人と付き合ってたんだ
「そんなんしてたら気まずくてヤナギに合コン頼めないだろ」
『そうなの?』
「そうだろ、普通に」
『…おれ、普通なんて知らないし』
おれはきょうへいしか知らないのに
セックスしたのだってきょうへいだけだし
自分で聞いたくせに八つ当たりだってわかってるけど
こんなんだから子供扱いされてる気がして
なんか納得できなくて窓の外を眺めた
すると、
「………祈織」
と、ちょっと迷った感じできょうへいはおれの名前を呼んだ
『なに、』
「俺だって今はお前だけだぞ?」
『…しってる、』
きょうへいは
仕事だって忙しいし、おれの世話しなきゃいけないから今はおれとしかセックスしてない事だって、しってる
「本当にわかってんのかよ」
『わかってるよ、』
だから、おれがきょうへいに甘えているうちは
おれがきょうへいの事つなぎ止めてたら
おれとこのまま一緒にいてくれる事だって
しってる
それが本当にいい事かはわかんないけど
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