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第165話
絶対お兄ちゃんには言わないで
と、みーちゃんから電話がかかってきた
朝から電話なんて何かと思ったら
今日の夜、何やらどこかに一緒に言って欲しいとの事だった
なんできょうへいに言っちゃダメなのか分からなかったけど
シバくんしか頼れる人がいなくて
と、言われると
おれはあんまり人に頼られる事が無かったから
ちょっと嬉しくて
わかった、と頷いた
『きょうへい、おれ今日ご飯食べて帰るから先帰ってて』
と、仕事が終わる頃にきょうへいに伝えに行く
「え?急だな?あきらくん?」
と、言われ
本当はみーちゃんとだけどみーちゃんにはお兄ちゃんに言わないでって言われていたから
『うん』
と、嘘をついてそのまま社長室を出ようとするが
「あきらくんとなら酒飲むんだろ?気を付けろよ、今日お前大人パンツだし」
と、恥ずかしい事を言われたけど
ちゃんとおもらしもおねしょも治すって決めたから
ちゃんと頷いた
『おしっこ行ってから行くから』
「そうだな、偉い」
と、頭を撫でてくれて
ちゃんとトイレ上手になろうとパットを濡らさないように意識することにした
『じゃあ、帰りもしかしたら遅いかも』
と、きょうへいに手を振って
もう一度トイレに行ってからみーちゃんの所に向かう事にした
◇◆
「シバくーん!お待たせ」
『みーちゃん、久しぶりです、』
「うん、久しぶり。ごめんね、急に付き合ってもらうことになって」
『ううん、別に空いてたから』
あれ、みーちゃんと2人って初めてじゃん
ちょっと緊張する
『今日、どうしたの?急に』
「こんな事、申し訳ないんだけど…ちょっと彼氏の振りして欲しくて」
『…彼氏のふり?』
何それ、おれ絶対上手くできないじゃん
『おれ、あんまりそういうのわからないです』
と、安請け合いをしてしまった事をちょっと後悔する
『きょ…久我さんのが、上手なんじゃないかな、色々と』
「そんなのお兄ちゃんになんか頼めないよ、お兄ちゃんおじさんだしシバくんのがイケメンだし」
おれはきょうへいのがおれなんかよりかっこいいと思うけど
『上手く出来なかったらごめんね』
「隣にいてくれるだけでいいから…本当にこんな役目急にごめんね」
『ううん、それで…どこいくの?』
「あーうん、知り合いが開催するパーティーなんだけど」
『パーティー?』
話を聞くと
みーちゃんの知り合いが開催するパーティーがあるらしく会社の取り引き先の人も来るから行かなきゃ行けないらしい
そしてそこに、
浮気が原因で別れたみーちゃんの元彼も来るらしく見返してやりたいからおれに彼氏のフリしてとの事だった
ちなみにみーちゃんはすでに他に彼氏が居るらしいけど仕事で出張に行っていて
今日はどうしても来れなかったらしい
『ええ、おれ、パーティーとか何すればいいかわかんないよ』
「いや、本当に隣りにいてくれるだけでいいから。あとは好きな物とか食べてて」
『それにおれ、今日、普通の格好してきちゃったよ』
「男性はみんな普通のスーツだから大丈夫だよ、それにシバくんいいスーツ着てるじゃん」
そうなのかな、
そうかも
詳しくないけどきょうへいが買ってくれるスーツって基本的にいいやつだし
でも…
「もうちょっと時間あるからカフェでちょっと設定とか考えてから行こうか」
と、みーちゃんは笑った
あ、ちょっとみーちゃんってやっぱりきょうへいに似てる
『あ、あのさ、ちょっと買い物行きたいんだけど』
「買い物?」
『ワイシャツ。おれ朝汚したのそのまま着てきちゃったから』
と、白く汚してしまった所を手で隠す
「朝?」
『ヨダレ垂らしたやつ、歯磨きしてて』
「シバくん意外とそういう所ズボラなんだね」
『…ごめん、』
きょうへいに言われた通り着替えて来ればよかったな
こんな白くなると思ってなかったんだけど
普通に仕事してる分にはそんなに気にならなかったんだけど
さすがにみーちゃんの彼氏役なのにこれは情けない
「そしたらシャツ私に買わせて。今日付き合ってもらってるんだし」
『ええ、いいよ、そんなの』
「だって私の為に着替えようとしてくれてるんでしょ?それぐらいさせて」
いこ、とみーちゃんが先を歩いてくれてついて行く
「そう言えばこんな事頼んじゃって今更だけど、シバくん彼女いたりとか大丈夫?もしいたら迷惑に、」
『いないから、大丈夫』
「シバくんずっと彼女いないよね?イケメンなのに」
『別におれなんかイケメンじゃないよ』
「全世界の男にケンカ売ってる?」
『なんでよ』
「シバくんほどのイケメンが」
『きょ、…久我さんのがかっこいいじゃん。色々できるし』
「ええ?お兄ちゃん?お兄ちゃんは別にかっこよくないかな」
みーちゃんは妹だからきょうへいのかっこよさ知らないだけだと思うけどな
「お兄ちゃんも最近全然彼女作らないんだよね。やっぱり社長って忙しいのかな」
『…うん、忙しいかも』
仕事も忙しいのに、
おれの世話もしてるから、
『久我さんって、どんな人と付き合ってたのか知ってる?』
「お兄ちゃん?んー。どんな人だったかな…たくさんは話したことないんだけど、サバサバした感じの人だったかな」
『サバサバ?』
「私と違って、しっかりしてる感じの人だった気がする。元彼からどう見られてるか気にしたりしないような、芯を持ったような人かな」
サバサバ、
人からどう見られてるか気にしない、
芯を持った、
と、みーちゃんの言葉を頭の中で考える
みーちゃんは
自分と違うって言ってたけど
おれの方が全然違う
きょうへいはそういう人が好きなんだ
「かっこいいよね、そういう人のほうが。私なんかこんな役割シバくんにお願いしちゃって」
みーちゃんでも、
私なんか
自分なんかって思うんだ
おれと一緒じゃん、
『おれ、みーちゃんは、しっかりしてるし優しいから好きだけどな。サバサバしてなくても別にいいし』
「…シバくんってなんでそんなかっこいいの、かわいいしかっこいいし」
『ええ、何が?』
「私に彼氏がいなかったら告白してたのに」
『いや、気使わなくていいよ本当に』
「もう、本当のことなのに」
『ごめん』
「まぁシバくんに告白するなんて恐れ多くてできないかな。実際は」
『いや、おれは』
全然そんな事ないのに
告白だって
大人になってからそんなされたことない
学生の頃はまぁそこそこ足速かったから告白されたことあったけど
「シバくん彼女とかできたら教えてね。私シバくんのこと甥っ子みたいに思ってるんだから」
『甥っ子って。コタと一緒じゃん。せめて弟』
コタもおれのこと仲間だと思ってるかなら…
きょうへいの家の人っておれのこと子供だと思ってるんだろうな
「あ、あとお兄ちゃんに彼女できたら教えてね!」
『えっと、うん』
「まぁお兄ちゃんはシバくんにゾッコンだから彼女作る気なさそうだけど」
『ぞっこん、じゃないでしょ』
「そんな事ないよ。観ててわかるくらいゾッコン。でも早く彼女は作って欲しいなぁ」
『…なんで?』
「だってシバくんだってすぐに彼女出来ちゃうでしょ?そしたらお兄ちゃん結局1人になるし…仕事だって今は安定してるけどいつ何があるかわからないんだから。それなら早く安心できる人とくっつくた方がいいと思うけどなぁ。ただでさえ忙しいんだから癒しは必要だよ」
と、みーちゃんは少し考えながら言った
癒し、とか
おれはきょうへいにあげられないし、
安心も安定もおれはきょうへいにあげられないってことも考えてしまう
「まぁシバくんがずっと一緒にいてくれれば問題ないんだけどね」
と、みーちゃんの言葉が耳に入らなくなるくらい考え込んでしまった
おれが、ずっときょうへいと一緒にいるのは無理なのかな
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