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第183話
「ん?なんだこれ」
朝昼兼用の飯を食った後
軽く掃除とベッド下のおむつのカゴに
新しいおむつとタオルを補充していたら
カゴの下に何やら紙がある事に気がつく
それを拾い
半分に折りたたまれたそれを開くと
思わず顔がにやけてしまう
いい物を拾った、とそれを持ち
サンタクロースからのプレゼント、
Chromecastのセッティングに夢中な祈織が居るリビングに戻る
『あ、きょうへい。できたよ、Chromecast』
「へえ、それで好きなの見れるんだ」
『うん。…どうしたの?なんかニヤけてるけど』
「なんか紙落ちてた。なんだこれ、」
『んー、そんなんより早くう』
と、俺にソファーの隣に来るように少し脚をパタパタ動かすが
俺が拾った紙を見て固まった
『きょうへい?あ!』
と、すぐに立ち上がり俺が拾った紙を奪う祈織
「あ、盗った」
『な、!ん、で!』
「なんでって。拾ったんだけど。なに?俺のじゃん」
『ち、ちがうん…だけど、これは…後で捨てようとして…間違えただけだから』
「ええ、俺はそれ欲しいんだけどな?〈なんでもしてあげる券〉?祈織が作ってくれたの?」
と、俺が拾ったのは
おそらく祈織の手作りの
なんでもしてあげる券だ
昨日の輪飾りとはクオリティの差がすごくて
パソコンで作られたと見られるそれは
子供が作るような物じゃなくて店のポイントカード並のクオリティだ
それなのに
なんでもしてあげる券って
『…ほしいの?』
「あぁ、ほしい。ちょうだい」
『…なら、いいけど』
と、10枚綴りのそれをおずおずと差し出す
「くれんの?使っていい?」
『…いいけど…紙切れじゃん。いらなくない?そんなんなくてもおれなんでもするし』
「いや。紙切れってクオリティじゃねえし。それに俺はこれがほしい」
『へえぇ、…いいけど』
「よっしゃ。いいもん過ぎて使えねえかも」
いいもんゲットした
かわいいやつもらった
『…きょうへい、俺といっしょだな』
「なにが?」
『おれも、それまちがえてあげたけど…きょうへい喜んでくれたから』
「あぁ、指輪?」
『うん。きょうへいも間違えだったかもだけど…おれは嬉しかったし』
「…俺のは間違えじゃねえよ。恥ずかしかったから迷ってただけ」
と、祈織の顔を見ると
勢いよくそっぽを向いて俺の視線からにげる
なんだよ、その反応
『…きょうへい、』
「なに?」
『一緒にはやく映画みよ』
「…あぁ、そうだな」
先にそっちか
へえぇ、指輪嬉しかったんだ
引いたかと思ったけど
あの嬉しそうに見えた顔はどうやら俺の勘違いじゃなかったらしい
「これ何に使おうかなー」
『使えねえんじゃなかったの?お願いの度合いによって必要な枚数変わるから』
「ええ?例えば?」
『コーヒーとかするのは1枚』
「他には?」
『えっちなのは恥ずかしいから3枚』
「おお、3枚でなんでもしてくれんだ」
『なんでも…ではない、』
それは是非是非使用したくなってきたな
『でもきょうへい』
「なんだ?」
『そんなのなくてもおれきょうへいが飲みたかったらコーヒーいれるしきょうへいの為ならなんでもするよ?』
「なんでもしてくれんの?なんで?」
『だっておれはきょうへいの物だし。好きに使っていいんだよ』
「その言い方なんか気に食わねえな」
『なんで?本当の事だろ』
「いや、お前は俺の物って言われんのいやだろ?それに使うとかって言い方ちげえと思うけど」
『違うの?』
と、キョトンとした顔をする
わかってねえ顔してんな?
まぁそこがかわいいんだけど
「お前ちょっと頭悪くてかわいいよな?」
『は?頭悪い?なんで?』
「いや?自覚ねえならいいけど」
『ええ?おれそんなバカじゃなくない?どこが?』
「ええ?さっき間違えておむつにおしっこした所とか」
『…それは、』
と、恥ずかしそうに顔を背ける
「祈織。お前は俺のものじゃない。ちゃんと嫌な事は言っていいんだぞ」
『…それ、もうおれのこと要らないってこと?』
「いや、ちげえよ?」
『じゃあなんでそういう事いうの?そういうの言われんのおれやだってきょうへい知ってんじゃん』
「祈織、落ち着け。お前は物じゃないだろ?」
『…うん、』
「だから、俺の物とかじゃなくてお前の意思でそばにいて欲しいし、俺も俺の意思でお前の事そばに置いてんだよ。わかるか?」
『物じゃなくて…犬だから?』
「お前は犬でいいの?」
『…犬じゃ、やだ』
「じゃあ犬じゃなくてちゃんと考えて傍にいな」
と、祈織の頭を撫でると
よくわからないという顔をした
なんでわかってくんねえのかな?
「祈織、何見るの?」
『ええ、とりあえず有吉のやつ』
と適当にバラエティ番組を流す祈織
「後で買い物行くけどお前どうする?」
『買い物?行く。1人でお留守番は嫌だし』
「んー、じゃあ昼飯がてら一緒に行くか」
『うん、何買うの?』
「実家にお土産とか色々」
『あー。あとパンツ買って』
「パンツ?あぁ、新しいやつ?」
『うん。年末だし』
そういや、そうだな
おもらし対策の方ばっかり考えて忘れてたな
新しい大人用のパンツ
今年は大人用のパンツを履けるだろうか
「そっか、じゃあかっこいいパンツ買おうな」
『うん』
「でも祈織さっきおもらししちゃったから今日は大人パンツは履けねえな」
『おもらししてねえじゃん、間違っただけ』
「外寒いし買い物時間かかるけど大丈夫か?ちゃんとトイレいけるか?」
『…じゃあ、今日はパットするから…大人パンツででかけよ』
「そうだな、じゃあそうしよ」
よしよし、と頭を撫でると
情けなさそうに自分の中心をもじもじと弄る祈織
あぁ、かわいい
前にも思ったが祈織はおもらしやおねしょがむかしから多いからか自分に自信が無い
それを気にしているところも
自信が無さそうな所も
かわいそうで
かわいくて仕方が無い
大事にしなきゃなぁ、と
祈織の隣に腰を下ろし
よしよし、と俺も祈織の股間に手を伸ばし上からよしよしと撫でる
うん、柔らかくてかわいい
『なに?さわるの?』
「いや、かわいいからよしよししてるだけ」
『いいよ、きょうへいは好きな時にさわっていいんだよ』
と、またかわいくてかわいそうな事を言うもんだからそこを触るのをやめて頭を撫でる
やっぱりわかってねえんだな
『なに?もうおわりでいいの?』
「あぁ、後でにする」
『そっか』
と、自分でまたもにゅもにゅと少しだけそこを触った
「お前のふにゃちんかわいいからそんな嫌そうにすんなよ?」
『…きょうへいはこれ好きなんだっけ?』
「あぁ、俺それ好きだぞ?かわいい」
『ふーん。じゃあおれも嫌じゃない』
と、すぐに俺に抱きついてきた
あぁ、そっか。こいつは俺に肯定されたら
自分の事大事にできんのか
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