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第192話

「あちぃ……お、熱下がってそう」 と、起き上がった時の身体の軽さに驚きつつも 飲み物を飲むと 隣には祈織の姿はなくて恐らく起きて下に行ったのだろう 布団とか濡れたりは…と一応確認したがそれもなくとりあえず安心する 枕元の体温計で熱を測るともう微熱もないくらいではらへったし、と下に降りることにする 「これはしばのしー、で、これが、こたのたー」 『へええ、字もう全部読めんじゃん』 と、祈織と虎太郎の声が聞こえてきて どうやらコタツのところで祈織は虎太郎の相手をしていたようだ 『こた、くがこたろうのくは?』 「く、は…これー」 と、虎太郎がカードを指さす 「なにやってんの?」 と、二人で遊んでいたところをのぞき込むと 少しだけ目を見開いた祈織 『起きて大丈夫なの?』 「あぁ、熱下がった」 「おじさん、しばとかるたしてんの」 「かるたとは…随分古風だな」 と、2人の手元を見ると 通常のかるたの遊び方と言うよりは 知ってるひらがなを並べて遊んでいたような感じだな   『こた、きょうへい名前知らないんだって』 「は?なんで?」 『いっつもおじさんって言ってんじゃん』 「あぁ、そうだっけ。祈織教えてやって」 と、2人が遊んでいたコタツに俺も腰を下ろすと虎太郎も俺の顔をじっと見る 「おじさんおきたの?」 「あぁ、起きたよ」 「おねつは?」 「治ったよ」 『下がった?熱』 「あぁ、大体な」 『そっか、あ、えーと』 と、ちょっと迷ったように俺の顔を見た祈織 なんだ、と聞こうとすると すぐに立ち上がってキッチンの方に行ってしまう そしてすぐにそちらから 母さんと祈織の話し声 なんだ?と本気で意味がわからなくて 立ちあがろうとしたが 「お兄ちゃん起きたのね。お腹空いてる?」   と、キッチンからひょっこりと覗ききいてくる母さん 「あーうん。なんか食いたい」 「はーい」 と、しばらく待っていると 『きょうへ、』 と、お盆を持った祈織 「おお、持ってきてくれたんだ」 と、それを受け取ると祈織も再び隣に腰を下ろした 「それしばがばぁばとやったんだよー」 『ちょ、こた』 「それ?」 「おじさんのごはん?しばがやるってこたもちょっとおてつだいした」 「そうなのか?」 『…きょうへい、熱出てても結構食うし、』 と、お盆の上を見ると小さい土鍋で 蓋を開けると卵雑炊からふんわりと出汁の匂いがする 「うまそー、ありがとな」 『…お母さんに、教えてもらってつくった』 お前いつの間にこんなんできるようになってんだよ、と湯気のせいで目頭が若干熱くなる 「しばじょうずにできてよかったね」 『……こた、言わないで』 「なんで?」 『…なんでも』 よしよし、と恥ずかしそうにコタの頭を撫でる祈織 「こたココアのみたくなったからばぁばにもらってくる」 と、キッチンの方に行ってしまう虎太郎 『はやく、たべて』 と、祈織は俺の目を見てきて どこまでもかわいいやつだ 「うん、食うよ」 『きょうへい熱下がってよかった』 「心配だった?」 『…うん、』 「お、うまい。母さんのと同じ味する」 『お母さんに教えてもらったから、』 「ありがとなー、心配かけてごめんな」 『でも、きょうへいも、たまには熱だしてもいいよ』 「出さねえよ、なんも出来なくなるだろ?」 『でも、おれはちみつレモンの作り方も、雑炊の作り方も教えてもらったよ』 「へぇ、じゃあ熱出したらまた食えるんだ、これ」 『うん、だから熱出してもいいよ、むりしないで』 「…無理なんかしてねえよ。熱も出さねえし」 すりすり、と隣に擦り寄りながら言ってくるが 目は逸らしていて 結構心配させてしまっていたようだ 「ごめんな」 『なんで謝んの』 「熱出したからだろ」 『そんなん、おれも出したしおれがうつしたのかも』 「お前のはうつんねぇよ」 『なんで?』 「俺強いし」 『なんだよそれ』 と、すぐに俺の膝の上に寝転がりながら甘えてくる 「お、甘えん坊再開か?」 『…ちげえじゃん、ちょっと横になっただけ』 「祈織、食うまで待ってて。その後一緒に遊んでやるから」 『…子供じゃないんだけど』 と、ゴロゴロと甘える祈織の頭を撫でていた時だ 「あれ、お兄ちゃん出かけてなかったの?」 と、後ろから声が聞こえ振り向くと 「ミサ、お前きたのかよ」 と、祈織もミサの声を聞いてすぐに俺から離れた 「あ、シバくんあけおめー。寝てたの?」 『…おめでとう、起きてた、』 「つかお兄ちゃんもパジャマじゃん。寝てたの?」 「熱でて寝てたんだよ」 「うわ、うつさないでよ」 「あっち行け」 しっしっと手で払うと さっさと自分の部屋に荷物を置きに行ったミサ 祈織は膝枕をやめて 俺に背中を向けゴロゴロと寝転がる 「なあ、もういいのか、甘えんの」 『みーちゃんに見られんだろ』 「甘えん坊見られんの恥ずかしいのか?」 『ちがう、全部違う』 「は?全部って?」 『きょうへいにはわかんねえよ』 と、背中を向けたまま言うから頭を撫でていると 手を払われる 「なんだよ」 『みーちゃん、くるかもだろ、触んな』 「なんで?」 『見られたくない』 「甘えてんの?」 『…それもだけど、』 「なに?」 なんだよ、急に機嫌損ねて。 俺なんかしたか? 『みーちゃんに、バレたくない』 「おもらし?」 『…ちっげえし』 「ちげえの?」 『それもだけど……』 「なんだよ」 『きょうへいはいいのかよ』 「だから何がだよ」 『…なんでもね。ちょっと寝るから触んないで』 と、何故か完全に機嫌を損ねてしまった 「祈織、ごちそうさま。後でちょっと散歩行こうなー」 よしよし、と頭を撫で 軽くシャワーでも浴びに行くことにした ちょっと外に連れ出して2人っきりになったら甘やかしてみるか

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