「お、今日もおねしょ無かったな」 『うん、昨日はおもらしもしなかったから普通のパンツでもいい？』 と、寝るとき用のパンツが濡れてないことを確認してきょうへいが言ったから そろそろもこもこパンツの卒業させてくれるかな、と打診してみる もこもこパンツかっこ悪いからやなんだもん 「うーん、そうだな、ここ最近のおねしょもおもらしも無しで頑張ってるし」 『やった』 「よし、会社行こ」 今日は大人パンツだから気を付けよ、と 考えながらおれも急いできょうへいの後ろを追いかける 「今日まず何すんだっけ」 『今日は、朝からプレゼン会あるからきょうへいも出席だよ』 「あー、そうだったな」 『うん』 「お前最近仕事までできるようになってっからなんか焦るな」 『ええ？なんで？つかおれ最近まで仕事出来なかった？』 「そういう訳じゃねえけど。なんか最近ヤナギみたいに仕事こなすだろ？」 それは、 きょうへいの役に立ちたいから、 『でも、仕事できる方がきょうへいいいでしょ？』 「あぁ、まぁそうかな」 きょうへいはそう言ったけど いっしゅん、ほんの一瞬だけ なんか迷ったような顔をした なんだろ、漠然とした違和感と 不安感で、 『でも、おれはきょうへいいないとなんもできないから大丈夫だよ』 と、すぐに訂正をした 「なんだよそれ」 するとすぐに、きょうへいは いつもと同じ顔で笑って おれの言ったことは間違えじゃなかったと安心する きょうへいのために仕事はできるようになりたい でも、きょうへいが嫌なことはしたくない おれ、間違わなかった 間違わなかったからきょうへいの隣にいられると安心して 『きょうへい、今日は朝ごはん温かいのがいい。ココア』 「じゃあ一昨日行ったばかりだけどフレンチトーストのところにするか」 『うん、今日はパンケーキにする』 「そうだな。一昨日フレンチトースト食ったもんな」 『うん、たまごのったやつ』 「卵乗ったやつな」 『うん、それがいい』 そうしよ、ときょうへいの横顔を見てると いつものきょうへいの顔だった ◇◆ 「いっおりーん、きょう飲みに行こ」 『ええ、今日はいかない』 「なんで？」 『気分じゃない』 お酒は飲みたくない せっかくおねしょもここ最近しなかったのに きっとお酒飲んだら台無しだ 「ええええ、なんでよぉ、友達じゃん。明日休みだからいいじゃん」 『今日はやだ。ファミレスならいいよ。お酒飲まない』 「なんで？あ、最近おもらしとかおねしょ増えてんでしょ？だから心配なの？いいよ、失敗しちゃったらオレが助けてあげるし」 『ちっがうし、してないから、どっちも』 「いいよ別に強がんなくったって」 『してないからしたくないから行かない』 「え？まじでしてねえの？おねしょも？パンツは？」 と、あきらくんは おれの股間を鷲掴みにしてきた 『ちょっ』 「げっ、まじ普通のパンツじゃん、」 『だから言ったじゃん。してねえの』 やめろ、と股間を鷲掴みされた手を離させながら教えてあげる おれ最近ちゃんとトイレできてるし 失敗してねえし 「ええ？まじで？これでおもらしもおねしょも卒業？」 『…もとから、できる時もちゃんとあったし』 「いおりんのアイデンティティじゃん」 『そんなアイデンティティいらない。だって、いやじゃん…迷惑かけるし、』 「迷惑って？社長に？」 『…うん、』 きょうへいは迷惑って絶対言わないけど 楽しそうに片付けてくれるけど おもらしもおねしょもしないと誉めてくれるし しない方が偉いに決まっていた 「ええ？でもおもらしもおねしょも全部本当にしなくなったら社長いおりん飼う意味無くなるんじゃないの？」 『…え？』 「だっていおりんもうちゃん自分で稼いでるし仕事もちゃんとできるようになっちゃってるから…おもらしもおねしょもしなかったら立派な大人じゃん」 『それの、何がダメなの？』 「だめじゃないけどさー。だめじゃねえけど、立派な大人になったら、ペットじゃなくてちゃんと大人同士にしなきゃだねって話し」 『なにそれ？今までとちがうの？』 「いや、それはいおりんと社長が決めることでしょ？でも社長も、今までのいおりんだから飼ってたけど、立派な大人は飼うって言わないんじゃないかなって」 え？ おれ捨てられんの？ 「だからまたおもらししてもいいんだよぉ」 と、いうあきらくんの声はほぼ耳に入らなくて 頭の中がぐるぐるする きょうへいの為にちゃんとしたくて 仕事頑張ってたし、 おもらしもおねしょもしないで大丈夫になって、 おもらしもおねしょもしなかったら 立派な大人になっちゃうの、おれ いや、年齢的には結構前から大人だけど そんな立派な大人な自覚なんてこれっぽっちもなかった 立派な大人は、飼ってくれないのかな 飼ってくれないなら どうすればいいんだろう、 飼ってくれなくても、きょうへいと一緒にいたいのに 『あきらくん、おれ今日かえる』 「え？ファミレスは？」 『そんな気分じゃなくなった』 「なんで？いじわる言ったから？」 『…あきらくんが言ったのはいじわるだけど…本当の事な気もするから』 捨てられる、どうしよう