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第199話

『ぅ、っ、んっ、ぐすっ、』 夜中に隣から泣き声が聞こえて目を覚ます 「いおり?どうした?」 おねしょでもして泣いてるのかと思った しかし、祈織は丸まって横になっていて 俺も寝ながらシーツを確認したが濡れていない 寝てるのか?と、身体を起こして 祈織を見るとやっぱり起きてなくて うなされているというかグズグズと泣いていて 「祈織、起きな」 と、すぐに起こしてやる 「祈織、どうした?」 『…きょうへ、』 「どうした?何泣いてんの?怖い夢みた?」 『ん、……っ、』 起きたけど まだぼーっとしていて 寝起きのせいで 自分が泣いている事に気付いていないのか ボロボロ涙を零しながら すぐに枕に顔を埋め隠して いやいや、と首を横に振る 「どうした?祈織。起きな」 『きょうへ、…夢、』 と、ようやく目が覚めたのか ゆっくり顔を上げて まだ困惑した顔で俺の事を見る 「ほら、よしよし」 『きょうへ、っ、ぅっ、ぐす、きょうへい、ぃ、』 おお、ガチ泣き。すげえ泣いてる 比較的最近泣き虫でグズグズ泣いたりしてるけど こんな大泣きすんの珍しいな、と とりあえず落ち着くまでよしよしと背中を撫でて待つ 「どうした?怖い夢みたか?」 『…、うん、やな夢、みた』 「おお、そうか。どんな夢?」 おいで、と起こして肩を抱き寄せ 落ち着かせるように背中を撫でてやる 『…や、言わない』 「なんで?怖い夢、人に言った方が本当にならねえぞ」 『だって、』 「とりあえず水飲むか」 『うん、』 よいしょとベッドから降り とりあえずお湯、と ウォーターサーバーのお湯に少しだけ水を入れて飲みやすい温度にしてやる 本格的に起きるならなんか他の飲み物入れてやろ 「ゆっくりな、ふーふーして飲みな」 『…うん、』 「どんな夢みた?言わない?」 『…言わない、』 「なんで?言った方が怖いの無くなるぞ」 『…きょうへいが、』 「おれが?」 『きょうへいがおれのこと置いてった』 「は?何が?」 『…ゆめ、置いてったんじゃん、おれ準備終わってなかったのに』 「ええ?俺そんなんしたのかよ」 『だって、おれまだネクタイ上手にできねえのに、』 「ネクタイ?」 『うん、』 「ごめんなー、夢の俺ダメだな」 『ちが、おれが、ネクタイ出来なかったから』 「俺が祈織の事置いていくわけねえだろ。安心しな。大丈夫だから」 『…うん、嫌な夢みてビックリしただけ、』 落ち着いてきたな、と俺もひと安心して もう一度寝るかと横になろうとしたが 『あ、おれ、昨日えっち途中で寝た』 「…今それかよ」 『だって、』 「眠かったろ、遅かったからな」 『…うん、いま、』 「するか?」 『……し、する、しない』 しないのか? 「じゃあくっついて寝ような」 『うん、ぎゅってする、』 「…うん」 よしよし、と背中を撫でていると 手だけはぎゅっとしがみついていて 落ち着いてはいるようだが いつまでも涙は止まらないようだった 「祈織、寝れねえの?」 『…うん、』 「起きよ」 『…だって、』 「ちょっと温かいの飲も。俺も飲みたいし」 『…うん、』 と、2人で起き上がって リビングに向かい ソファに座ろうとして 祈織は顔を上げて 俺の事を見て少し迷った顔をする どうした?と思ったが すぐにもじもじと自分の股間を触りだしたから気付く 「祈織、おしっこ?」 『…うん、おしっこ、』 「トイレ行こ」 連れてってやろ、と手を引いてそのままトイレに向かうと祈織は少しもじもじしながらも俺に着いてくる そういや今日は寝る前トイレに行かせ忘れてたがおねしょ大丈夫だったな 『おしっこ、きょうへい、漏れちゃう』 「大丈夫、すぐそこだからトイレ」 『うん、』 と、ぎゅっと股間を握りながら着いてきて トイレでズボンと下着を下ろしてやると すぐにおしっこをはじめた おねしょもおもらしも最近しねえけど やっぱりトイレは相変わらず近いから ギリギリの事もあるんだよなあ 『おしっこおわった』 「うん、ちゃんとトイレまで我慢できて偉かったな」 『うん』 リビングに戻り 祈織をソファに座らせて 「ココアにするか」 『うん、そうする、』 と、ソファから立ち上がりすぐにおれの後ろにくる 1人で待ってんの嫌だったか 『きょうへいは、』 「あぁ、俺はコーヒー」 『寝れなくなるよ』 「いいんだよ、別に。それよりお前寒いだろ、なんか羽織っといで」 『や、こっちにいる』 まだ夢の不安が残っているのか 俺から離れようとしない祈織 エアコンは付けたがさっきまで消していたため部屋は少し冷えていた 「お前裸足で歩くから見てるこっちが寒いんだよなあ、冬だけでもスリッパ履くか?」 『家でなんか履くのきらい』 そういや ここに来て直ぐに二人で生活用品買物行った時に スリッパを買ってやろうとして拒まれたな、それ以来特に気にしてなかったがたしかに常に裸足だよな、酔っ払った時とかもすぐにくつ下脱ぎたがるし 「そこの毛布でいいから羽織っときな。お前俺より冷えるんだから」 『きょうへい心配症、』 そう言いながらも言われたとおり ソファーの上に置いてあった毛布を羽織り また直ぐに俺の後ろに戻ってくる 「ほら、できた」 『やった、』 それを渡して 先にリビングに行くように言うと こぼさないように気をつけてリビングのテーブルまで持って行って座っていた 先飲んでていいのに俺の事を待っているようだった 「熱いからふーふーしろよ」 『子供じゃないからその言い方やだって』 「いいだろ、べつに」 すぐに俺も自分の飲み物を持ってきて 隣りに腰を下ろして頭を撫でてやる 「うまい?」 『まだ飲んでない』 「ゆっくり飲みな」 『うん、』 あんな事は言っていたが 言われたとおりちゃんとふーふーして少し冷ましてから飲んでいて かわいい、と祈織のことを見ていると目が合って その顔を見ると もう泣き止んでいたが 泣いていた余韻か 目がまだしょぼしょぼしている そんな所もかわいい、と目元を少し撫でてやると すりすりと俺の手に頬擦りをしてくる 「悲しいの無くなったか?」 『うん、もう治った』 そしたらもう一度寝れるだろうな、と 俺も少し安心した ずっと泣き止まなかった祈織に 少し不安に感じていた 夢だけじゃなく 何か俺が不安にさせていたのでは無いかと 『おれ、きょうへいいないとダメなのにきょうへいが置いていったから』 「ごめんって」 『うん』 「置いてかねえよ」 祈織はそうやって 俺に安心をくれる 俺無しでは生きていけないって自分の不安をぶつけることで俺に伝えてくる こいつは俺無しではいられないと全身で言っていた 『うーん、寝れそ』 「祈織。俺はお前のこと置いてかない」 『何回言うんだって』 「んー、お前がわかるまで」 『夢の話だろ?』 夢の話 自分でもわかってるのに 怖くなって泣いてたのはお前だろ

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