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第203話

「べつにペットボトルか缶でよくない?」 『紙コップのがおいしいじゃん』 「変わんねえよ」 『あきらくんはベロがバカだから』 「オレのべろに失礼だろ、バカとか」 『本当のことじゃん』 「そんな違うの?じゃあオレも今度から柳瀬さんにコーヒー持ってく時は会社のやつやめよー」 と、紙コップのコーヒーを買ったことに文句を言われつつ会社に戻ると おれの席に座って待っていた きょうへいと、 …ヤナギさん、 きょうへいはなんかタブレットを見せながらヤナギさんと話していて、 それ、おれに確認しにきてくれたやつじゃねえのかな、 「あー、なるほどな。さすがヤナギ。頼りになる」 「はい、そこ分かりにくいっすよね」 「やっぱりお前に聞くのが1番だわ。助かる」 と、きょうへいはタブレットを閉じておれの席から立ち上がった 「お、おかえり。コーヒーは?」 『…うん、買ってきた、』 はい、ときょうへいにコーヒーを渡すときょうへいはそれを持って部屋に戻ろうとするから 『仕事、おれに聞きに来てくれたって、』 「あー、もう解決したから問題ねえ。い、…シバもそれ飲んだら俺の部屋来な。それか俺の部屋で飲んでもいいけど」 ヤナギさんに、聞いたから解決したんだ、 ふーん、 おれにはコーヒーおつかいして ヤナギさんに聞いたんだ やっぱりおれじゃなくてヤナギさんの方がいいんじゃん、 『…いい、こっちで飲む』 どいて、ときょうへいをおれの席から退かして 自分の席に腰を下ろす 「なんだよ、最近あきらくんと仲良しだよな」 と、きょうへいは文句いいつつ自分の部屋という名の社長室に戻って行って 別に仲良しじゃねえし、と おれはあきらくんにふん、と背中を向けて 自分の分のカフェラテに口をつける 「シバくんはこの後社長室だけどあきらくんはこの後空きある?ちょっとお願いしたいことあるんだけど」 「はい!オレ超空いてます!」 「じゃあ飲み終わったらでいいからあきらくんちょっと俺のとこ来てね、地下いるから」 と、ヤナギさんは早々にどこか、おそらく地下に行ってしまった 『んだよ、超空いてんなら在庫確認と発注しろよ』 「ええ、オレあれ超嫌いなんだもん」 『数字入力すればいいようにしといてんじゃん』 「それでも数えんのだるい」 あきらくんすぐサボる、と もうあきらくんと話すのは辞めた 「機嫌悪いからってオレに当たんなよ」 『…別に当たってねえし』 別に機嫌も悪くねえし 「うそつけ。いおりんそういうとこ子供だから治した方がいいよ」 『…ちげえもん、子供じゃねえもん』 「子供だよ。柳瀬さんならこんなことで機嫌悪くなんねえもん。オレにも気持ちよく仕事振ってくれんもん」 『………おれにはできないんだからしょうがねえじゃん、』 ヤナギさんじゃないから、おれにはできないんだ、 そんな事あきらくんだってわかってんだろ、 もういい、きょうへいのところ行こ、と 飲みかけだったカフェラテ一気に飲んでから パソコンやら色々持って きょうへいの部屋に行くことにした 「おー、祈織。来た」 『きょうへいが呼んだんじゃん』 「…どうした?ご機嫌斜めだな」 『べつに。』 「うそつけ。おいで。ちょっと抱っこしよ」 『…しねえもん。そんなん』 「は?なんで?」 『…子供じゃねえし』 「祈織、あきらくんになんか言われたか?」 『別に言われてない、』 「どうした、そんな不機嫌な顔して」 『…なんでもないって。なんか仕事で呼んだんじゃねえの?』 「いや?べつに」 『は?なんで呼んだの?』 「なんでってお前と話したかったからだろ。祈織ずっとあきらくんと一緒にいるから話す暇ねえし」 『…ふーん、きょうへい、』 「どうした?」 『やっぱり抱っこ、』 「お、させてくれんだ」 『うん、抱っこしたいんでしょ、』 「あぁ、したい」 『うん、していいよ』 ソファに座るきょうへいの上によいしょ、と乗ってきょうへいのワイシャツを引き出して シャツの中に潜り込む 「おいおい、なにやってんの」 『だっこ、』 「抱っこじゃねえだろこれ」 『……』 いいじゃん、 きょうへいがヤナギさんばっかり頼るから 「どうした?おーい、祈織」 と、きょうへいはワイシャツ越しにおれの頭を撫でてくれて 嬉しくて、 『…きょうへぃは、、の、…、』 「は?何?なんて言った?」 きょうへいは、おれのなのに そう言いたかったけど、言えなかった おれはきょうへいのだよ、なら 本当の事だし、簡単に言えるのに きょうへいはおれの、そんな事は言えなくて さっきまで嬉しかったのに 今度は悔しくて泣きそうになった 「どうしたんだよ、祈織」 よしよし、ときょうへいはおれの背中を撫でるから もぞもぞきょうへいのシャツの中にから抜け出して、 ゆっくりと座り直す 『…仕事、ごめん、紙出し忘れて』 「だからあれは俺も忘れてたし気にしなくていいって。ヤナギが出しといてくれたし」 『ヤナギさんなら出し忘れなかったのに』 「…そりゃしょうがねえだろ、ヤナギのがやっぱり仕事慣れてるし」 だから、きょうへいはヤナギさんが1番なのかな、 「別にお前が仕事できねえとか思ってねえって。ただ、ヤナギのが仕事ずっとやってんだろ?色々やりやすいんだよ」 そっか、きょうへいはヤナギさんとずっと一緒に仕事してるから… それこそおれときょうへいが出会う前からずっと一緒にいるんだ、 『…おれ、もうきょうへいの傍で仕事すんのやめる、』 「は?なんでだよ」 『だって、きょうへいその方が仕事しやすいでしょ、』 それに、ヤナギさんがきょうへいの側近で仕事しなくなったのは、あきらくんの教育のためで あきらくんもまだまだサボるけど1人で仕事もできるようになったから 教育係する必要もないし 「俺は別にお前でも仕事やりにくくねえよ?それにヤナギフリーにしとくとそれはそれで色々手回っていいし」 『だって、元々…ヤナギさんがあきらくんの教育係するためだったじゃん。あきらくんももう仕事できるし…おれのことほっておくとあきらくんにいじめられてめんどくさかったから傍においてるだけでしょ、』 「…いや、それは、それもあるけど、それだけじゃねえし全部は合ってねえ」  『…その方がいいじゃん……すぐじゃなくていいけど、』 「……お前俺の傍で仕事してんの辛いの?」 『………ちがうけど、』 「俺、お前に無理させてたか?」 『…だって、無理じゃんおれじゃ、』 「…わかった、一旦その話は保留な、」 『…うん、』 「ごめんな、祈織」 と、きょうへいは頭を撫でてくれた きょうへいは悪くないのに おれができないのが悪いのに

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