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第4話

 自分は青葉に恋をしているのではないかと、そう気づいたのは、「触診」されるようになってしばらく経った頃のことだ。  そうされる前から好意を抱いていたのか、それとも彼に与えられる悦びによって心に何か変化があったのか、正直なところナオにはよくわからない。  けれど、いつの間にか青葉と過ごす日常の些細な場面が愛おしく感じられ、やがてそれまで過ごした時間までもが甘く彩りを変えた。  朝起きて青葉の顔を見たときや、朝食のパンの香りを嗅いだとき。長く離れている時間も、遅い時間に帰宅した青葉にお帰りなさいと声をかける瞬間も。  ナオは青葉を心から恋しく思い、彼の傍にいられる嬉しさで泣きそうにすらなる。  こうして「触診」されれば体は歓喜で熱くなり、もっと触れてほしい、どこまでも気持ちよくしてほしいと素直に思う。  いっそ青葉と番になって彼の子供を産めたらいいのにと、心の奥底でそんな願望までも抱いてしまっているけれど、「ジュピター」に婚姻を厳格に管理されたこの社会では、そんな夢が叶うはずもない。  だから彼の前で何もかも曝け出すことなど、ナオにはできない。切なく苦しいけれど、この想いは黙っているほかないのだ。 「……ぁ、あっ」  窄まりに青葉の指先が触れ、知らず声が洩れる。  ぬるりとした感触からすると、そこはもう甘く潤んでいるようだ。柔襞を優しく撫でて、青葉が言う。 「ナオのここ、触れなくても濡れて、花みたいにほころぶようになってきたね。ほら、こんなに柔らかくなっているよ?」 「は、あっ、んん……!」  くちゅ、と微かな水音を立てて、青葉の指が後孔に沈み込む。  青葉の言うとおり、そこはしっとりと潤んで、中は熱く熟れたようになっている。  アルファの生殖器を受け入れるため、ナオの窄まりはほどけ、内腔はひたひたと濡れる。二本目の指を難なく挿入しながら、青葉が言う。 「きみの体はとても素直だ。これなら明日にでも結婚できるね」 「そ、な、こと……」 「きみの伴侶となる人は、どんなアルファなのだろうね? きみにふさわしい、優しく知性的な人だろうか?」 「は、ぁっ、んん、うぅっ」  中の具合を確かめるみたいに、二本の指で内壁をまさぐられ、腰がビクビクと跳ねる。  雄蕊だけでなく、ナオの後ろも、とても感じやすい場所だ。  最初は過敏なだけだと思っていたのに、青葉に何度も触れられ、丁寧に開かれていくにつれ、快感を覚えるようになってきた。  中でもお腹の側にあるとある一点は、まるで――――。 「ああっ! あ、ン、そ、こっ」 「ここ、いい?」 「は、いっ、そこっ、とてもっ、ぁあっ、んふぅっ、ううぅ……!」  鮮烈な悦びに声が上ずり、はしたなくお尻が震える。  内腔の中ほどにあるほんの小さな窪みは、まるで快楽の泉のようだ。青葉が指の腹でなぞるだけで、視界がチカチカするほどの強い快感が四肢の先まで駆け抜ける。  優しく撫でられ続けると、まともにものも考えられないくらい気持ちよくなって、お腹の底が爆ぜるみたいな強く大きな絶頂に達してしまう。 「きみは本当に素直な、いい体をしている。今すぐここに番の雄を繋がれても、十分に受け入れられると思うよ。感じるここを切っ先でなぞられたら、きっとそれだけで何度もオーガズムに達して、啼き乱れてしまうのだろうね」 「先、生っ」 「私は楽しみだよ、ナオ。きみが『運命の番』と愛し合い、身籠るのが。今はまだ薄いお腹がゆっくりと大きくなって、やがて月満ちて赤子を産み落とす日がくるのが。だってきみは、もう私の家族みたいなものなのだからね」 「あっ、ぁあっ、せんせっ、青葉、せんせぇっ」  二本の指で窪みをまさぐられ、ぬちゅぬちゅと肉の襞をかき回されて、幼子みたいな声で喘いでしまう。  ナオの後ろはもう蜜壺みたいにトロトロになっていて、青葉が指を動かすたびにくちゅくちゅと淫靡な水音が立つ。  屹立したアルファの生殖器というものが、どれほどのボリュームなのか、想像するしかないけれど、きっとナオのそこは柔軟にそれを受け止めるのだろう。そうして子種を授けられ、子を孕む。  でもその相手は、目の前の青葉ではないのだ。 (好きっ……、先生が、好きっ……!)  こんなに恋しく思っているのに、その気持ちだけでは結ばれることができない。  それはとても哀しい、けれど決して逃れることのできない、この社会に生まれた宿命だ。  ――――「絶対運命婚姻令」。  俗にそう呼ばれているこの国の婚姻管理法に従い、ナオと結婚して体に触れ、子を孕ませるのは、まだ見ぬアルファなのだ。 「はっ、ぁあっ、達、くっ、また、ぃっ、ちゃっ……」  雄蕊の先からトロトロと白蜜を溢れさせながら、ナオが再び達き果てる。 「ジュピター」がナオの婚姻相手を決める日が、どうか一日でも先になりますように。  ぼんやりそんなことを祈りながら、ナオは快楽の頂をたゆたっていた。

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