2 / 88
第2話
入学式が終わり、HRが終わった。
悠星のクラスは割とお喋りな生徒が多くて賑やかな感じだった。
そして彼の後ろの席は、さっき友達になったばかりの翔太。翔太について分かった事と言えば、明るく気さくで友達が多い...なだけではなく。
「翔太、ってさ」
「ん?」
「随分モテるんだな」
HR中ずっと感じていた熱い視線。それはもちろん悠星に対してではなく、後ろに座ってたイケメンに対してのもの。
「さっきから女子がチラチラお前の事見てるし」
「あーあんま気にしてなかった。...羨ましいか?」
随分と余裕そうに翔太が笑い返した。
「っ!!なわけねーよ!」
「ほんと?」
「からかってくんな!」
「ははっ、だってお前面白いし」
「.......っ!」
会ったばかりのこいつに遊ばれるとか...!!ムカつく!
するとそんな悠星の思いに気づいたのか、翔太が俺の頭をぽんぽんと叩いてきた。
「まぁまぁそんなに怒るなって。確かに俺はモテる。でも俺以外にもモテる奴はいるよ。例えば...安田先輩とか」
その名前を聞いた瞬間、壇上で喋っていた彼の顔が、声が、頭に浮かんだ。誰にでも爽やかな笑顔を振りまき虜にする。でも彼が振りまいてるのは蜘蛛の糸。餌食になってしまえば、もうそこから逃げられない。
黙ってしまった悠星を不審に思った翔太が、彼の顔を覗き込む。
「...悠星?なぁ聞いてる?」
「えっ、あぁ聞いてる聞いてる」
「大丈夫か?あ、そういや入学式の時も顔色悪かったよな?知り合い?」
「...幼馴染」
やっぱりあいつの話をするのは楽しくない。
...胸がモヤモヤする。
「え!?マジで!?」
「うん...ってこの話はもういいからさ、帰ろう。」
そう言って立ち上がった時だった。独特の呼び出し音が校内に鳴り響く。
『1年A組、田口悠星君。至急、生徒会室に来て下さい』
「...は?」
一瞬耳を疑った。しかしそれは嘘とは告げてくれない。
『繰り返します。1年A組田口悠星君。至急、生徒会室に来てください』
クラスの奴らが悠星を見て驚いてる。
いや一番驚いてんのは俺だからな!?
でも、何で生徒会に呼び出されなきゃいけないんだ?嫌な予感しかしない。
「悠星...お前何かやらかした?」
「いや?全く」
「じゃあなんで...」
「そんなの俺が一番知りてーよ!!」
思わず悠星は声を荒げた。その声は予想に反して教室に大きく響き、周りの生徒が一斉に悠星を見る。この異様な空気のお陰で逆に落ち着いた。
「あ...悪りぃ」
「や、大丈夫。...どうする?」
翔太の不安そうな顔を見て申し訳なく思うが、今日はまさかの出会いのせいで落ち着かない。
「帰るに決まってる」
悠星と翔太は荷物を持って廊下へ向かった。
あいつには絶対に関わるもんか。
そのはずだったのに。
ともだちにシェアしよう!