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第3話

廊下へ出ようとした時、1人の長身の男が壁にもたれて立っているのが見えた。スラッとした細身の体型で、青縁の細い眼鏡がインテリ感を強調している。真面目そうなそいつはこちらを見つけてニコッと微笑んできた。周りの女子生徒からは黄色い歓声が飛び交っている、が。 ...気味が悪い。 直感でそう思った悠星は、男がいない方の出口へ向かった。しかし。 「田口悠星くん」 「!?」 ガシッ、と腕を掴まれた。 「...何ですか。あと誰ですか」 正体不明の男をじろっと睨みつけるが、男はただ微笑むばかり。 「2年の堺亮介。今放送で呼んだだろ、君を迎えに来た」 ああ...さっきの...。余計な事しやがって。 悠星は更に不快感を露骨にして睨むが、相変わらず胡散臭い笑顔は張り付いたまま。しかも掴まれた腕は、何回か振り払おうとしたがビクともしない。 見た目によらず馬鹿力かよ... 「...離してください」 「それは出来ない」 「なんで」 「離したら田口君、逃げるだろう。それにここで逃すと雅樹がうるさいから」 雅樹?...はっ、なんだ。あいつの犬か。 「怒られりゃいいじゃないですか」 「ははは。君は酷いなぁ...」 堺は苦笑しつつため息をつく。まぁ酷いと言われれば酷いのかもしれないけど、悪いが俺の知った事ではない。行って被害に遭うのは俺なんだから。怒られるくらい可愛い事なんじゃねーの? ...と思っていたら、いきなり堺に腕を強く引かれ、軽く抱き合う体勢になる。一体何のことだか思考が追いつかず茫然としていたら、そっと耳打ちをされた。 「雅樹からの伝言だ。『今逃げても無駄だから』だと」 そう告げて彼の顔が離れて行く。 「君”自身”の為にも、大人しくついて来た方がいいと思うぞ。...あいつの事はよく知っているんだろう?」 「...っ」 今逃げても無駄、という事は、これから先何かと理由を付けて付き纏ってくる事は明らかだろう。なら今呼ばれたこのタイミングで、あいつにビシッと言ったら俺の平和な学校生活は保たれるんじゃないのか...? 上手く行くかはわからないけど。 悠星は決意を固めて、堺の顔を真っ直ぐに見据えた。 「...分かりました、行きましょう先輩」 「ああ」 そして悠星は後ろを向く。そこにはちょつと眉を下げて不安そうにこちらを見る翔太がいた。 ...心配させてごめんな。でも多分、大丈夫。 「悪りぃ、翔太。俺やっぱ...行ってくるわ」 「...無理すんなよ?」 「おう、じゃあまた明日」 悠星達は生徒会室へと歩き出した。

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