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第7話
しかし、悠星の言葉に、雅樹の顔色は変わらなかった。それどころか、一言、
「そう」
と言い、亮介に掴んでた腕を離すように指示をした。戸惑いながらも亮介の手が離れ、雅樹がソファから下りる。自由の身になった悠星は、後ろを振り返る事なく家へと走った。
「ただいま」
静けさの中に消えていく悠星の声。共働きの両親は今日も仕事で帰って来てない。
自室に入り、ベッドにダイブする。
...まさか、雅樹が同じ学校だったなんて。
雅樹は、悠星が小5の時に隣の家に引っ越して来た。兄弟がいない悠星にとって、兄貴が出来たみたいですごく嬉しかった。
お互い特に用事が無ければ一緒に遊んだし、雅樹の友達に混ざって遊んだりもした。
とにかくあの時はいつも一緒だった。そして、いつしか家族以上、...恋人未満、みたいな曖昧な関係になって...
いや、考えるのはやめよう。
何で俺があんな裏切り者に振り回されなきゃいけないんだ。馬鹿らしい。
まぁ、相変わらずのイケメンだった...いや、むしろそれに磨きがかかっていた事は認めるけど...
その時、スマホのバイブが鳴った。画面には「ミツキ」と書かれていた。
そこにはいつものように悠星を誘う文。
「はぁ...」
ゆっくりと重い腰を上げる。
私服に着替え、財布だけを持って家を出る。
今は、こいつに振り回されるだけで十分だ。
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