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第10話

翔太がそんなことをぼんやりと考えながら二人を見ていると、悠星が心底申し訳なさそうに彼を見た。 「翔太もごめんな、こんなのに巻き込まれて」 悠星の謝罪に翔太は弾かれたように彼を見る。 「ははは気にすんなよ!いつものことじゃん」 一番迷惑を(こうむ)っているのは悠星だ。謝罪をする必要はない。 そんな意味も込めて悠星に言葉を返した翔太だったが、悠星はますます顔を暗くした。 「いつも...いつものこと...俺まさかこの状況に慣れてる...⁉」 「ゆ...悠星?」 「雅樹」 ブツブツと独り言を漏らしていた悠星だったが、雅樹をじっと視界に捉えた。 「迷惑だ。いい加減付きまとうのはやめろ」 それを聞いて、今までヘラヘラしていた雅樹だったが真剣に悠星へと向き合う。 「...じゃあ、週1回、俺に弁当作ってきて。それでお昼一緒に食べてくれるならいい」 「...は?」 まさかそんな事を言われるとは思わず。 そんな、ぽかんとマヌケな顔をした悠星を、雅樹は真面目に見つめ返した。 「俺は悠星と居たい。でも悠星は周りに迷惑かけたくない。それを週1で我慢するって言ってるの。ほんとは毎日作ってほしいけどそれはおいおいやってもらうとして...」 「いや何さりげなく言ってんの」 「で、どっちがいい?俺がランダムにおかず貰いに来るか、お弁当作ってくれるか」 「...」 ほんとは...ほんとは、顔も見たくない。話したくもない。でも、これ以上翔太にも、周りにも迷惑はかけたくない。...でも、コイツと2人きりになるのは... 弁当を見つめ、中々答えを出さない悠星を見て、翔太が雅樹へ顔を向けた。 「先輩、その時俺もお昼一緒にいいですか。堺先輩も一緒に。ね?悠星」 翔太の問いかけに、悠星はパッと顔を上げた。 「そ、それがいい!それならいい!それじゃないとヤダ!」 「いいんじゃないか?人数が多い方が楽しいだろ」 「...うん、いいよ。じゃあ次の月曜日からね。お昼楽しみにしてる」 雅樹はとても嬉しそうな顔をしながら、堺と教室を去って行った。 ああ...平穏を死守するぞって(心の中で)宣言したばっかりなのに...。いや、おかず盗まれるくらいなら週1我慢する方がましだよな!? 悠星が内心ぐるぐると考え込んでいるのを見て、翔太が楽しげに笑った。彼の笑い声に悠星はハッと我に帰る。 「ていうかごめんな、また巻き込んで」 「ううん、俺が悠星と食べたかっただけだから」 「お前...いい奴だな。肉いるか?」 「いる」 翔太の優しさに感謝しながら、昼休みの時間は過ぎていった。

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