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第12話

次の月曜日。 雅樹達は今日の昼は生徒会の仕事で忙しいからと、わざわざ朝一で悠星達の教室に来た、その放課後。悠星は1人で生徒会室まで来ていた。雅樹に渡した弁当箱を回収する為だ。翔太は部活がある為、一緒には来なかった。 大きく息を吸って、静かに吐く。ドアを2回ノックして、悠星はゆっくりと中に入った。 「失礼します」 夕日に照らされた生徒会室。窓が少し開いており、カーテンが揺れていた。 整然とした空間の中、1人の生徒が奥のソファーに座って寝ていた。 うわ...こいつの寝顔見るの久しぶり... 他に誰も居ない事を確認し、悠星は雅樹にそっと近づいた。長いまつ毛にスッと通った鼻筋、形のいい唇。見れば見るほど整った容姿をしている。 「こいつ、喋んなければイケメンなのに...」 悠星はそう言いながら、雅樹の隣へ座る。このまま起こして弁当箱を回収するはずだったのだが、なんとなく、気持ちよさそうに寝ている雅樹を起こすことは(はばか)られたのだ。 その時、ん...と身じろいだ雅樹が、頭をかくんと下げたと同時に悠星の肩へ寄りかかってきた。悠星は自分が隣へ座ったことで起こしてしまったのではないかと体を硬直させたが、雅樹が起きる気配はなかった。代わりに、肩に優しい重みと温かさが加わった。 小さな寝息が耳元に届く。 自分の心音が、やけに大きく響いている気がする。 体が、熱い。 昔とは、違う。 まだ、悠星達が幼かった頃。二人はよく一緒に遊んだ。 外で遊んだり、家でゲームしたり。 そして、遊び疲れた悠星が雅樹に寄りかかって寝てしまうことも、よくあった。 撫でてくれた手が、優しかった。 雅樹の隣は、とても安心できる場所だった。 ずっと、このままだと思ってた。 いつの間にか悠星は眠っていた。 その頬には、一筋の涙が流れていた。 その涙を、雅樹が舌で掬い取る。 舌が頬を滑る感触に、悠星は身じろぎするが、またそのまま眠ってしまう。 悠星の相変わらずな無防備さに、雅樹は微笑んだ。 雅樹は、悠星がこの部屋に入ってきた扉の音で、既に目が覚めていた。 生徒会メンバーは、先週半ばから取り掛かっていた急ぎの案件があった。今日〆切の生徒会の提出物をようやく仕上げ、放課後顧問に渡して解散。ほかのメンバーには一足先に帰ってもらい、雅樹は仮眠を取りながら悠星が来るのを待っていた。 悠星は、雅樹と過ごすのは週1の昼休みだけだと言って頑なに譲らなかった。初日に雅樹が襲いかけた事や悠星の敵対心具合を考えても納得は出来たが、彼はそれで満足できるはずがなかった。

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