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第13話 雅樹side
身じろぐ悠星をそっと自分の腕の中に収め、顔にキスの雨を降らせていく。
おでこ、まぶた、鼻先、頬。
優しく触れていくだけのそれに、悠星はくすぐったそうに眉を寄せる。
雅樹は悠星を起こしたいわけでは無かったので、敢えて優しく、彼に触れ続けた。
手を頬に添え、ゆっくりと体のラインに沿って手を滑らせていく。
本当は、服越しじゃなく、直接彼の肌を堪能したい。
ベッドに組み敷いて、彼の滑らかな肌を撫でまわし、隅々まで舐めたい。
肝心なところには敢えて触れず、周辺をこれでもかというくらい、責める。
そして耐えきれなくなった悠星自らに言わせるのだ。
「意地悪しないで」と―――。
そんな雅樹の妄想を感じ取ったのか、与えられている刺激がもどかしくなってきたのか。
「あ...はぁ、...ん...」
悠星は息を軽く乱し、頬をうっすらと上気させていた。
自分の思い通りに動いてくれる悠星に抱きしめたいほどの快感を覚えながらも、それ以上の行為は我慢する。
まだ雅樹の目的は果たせていないから。
これで今日は最後だという思いを込め悠星にキスをしようとしたその時、彼の瞼 がうっすらと開かれた。
「...」
「...」
無言で見つめ合う2人。
寝ぼけた悠星の顔も可愛いなと、雅樹は殊更 優しく微笑み返す。
そして悠星にゆっくりと問いかけた。
「ねえ、悠星」
「...なに」
「最近、なんか元気ないよね?何かあったの?」
悠星の目が僅かに見開かれ、ふいっと顔を背けられた。
雅樹は、この答えを悠星の口から聞きたかった。そして、自覚させたかった。
その為にも。あともう一押し。
雅樹は、悠星の握られた拳をきゅっと握る。
不安そうにこちらを見てくる悠星に、雅樹はふっと微笑み返した。
「大丈夫、夢だから。現実の俺は聞いてないよ」
「...でも」
「聞かせてよ、悠くんの思ってること」
小さい頃、雅樹は悠星の事をそう呼んでいた。
あの頃は、弟が出来たみたいでただ純粋に喜んでいた。
いつからだろうか。悠星のことを”好き”だと思うようになったのは。
その時、雅樹の手に、涙がぽたりと落ちた。
「俺は...、お前のことが嫌いなはずなのに、お前の笑顔を見るのは嫌いじゃない」
目に涙を溜めてぽつりぽつりと話す彼の姿は、とても美しかった。
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