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第14話

夢だから。これは、夢だから。 悠星は胸の内を、少しずつ、言葉にしていく。 「お弁当、作るときも、これ好きかなとか、考えちゃうし」 「うん」 「美味い、って、言ってくれるの、嬉しいとか、思っちゃうし」 「うん」 「...一緒に居たい、とか、思っちゃうし」 「うん」 雅樹は、悠星の髪をそっと撫でた。 「...こんな自分が、嫌だ」 雅樹の肩口に顔を預け、悠星は静かに涙を流す。 なぜかは分からないけど、雅樹の手が、心地よかった。 雅樹は悠星をちらりと見た後、静かに話しかけた。 「悠星は、俺の事嫌い?」 「...わかんない」 「じゃあ、好き?」 「...わかんないっ」 悠星は、おでこをぐりぐりと擦り付けた。雅樹はふふと微笑んだ後、髪を撫でながら優しく言う。 「俺は好きだよ」 「...!」 好き。 その言葉に、悠星の肩はぴくりと弾む。 耳が熱い。会うたび言われてきた言葉なのに。 ...耳元で喋ってるからだ。きっとそうだ。 頭の中でいっぱい思考を巡らそうとする間も、雅樹は言葉を続けた。 「俺はずっと好きだから。それは一生変わらない」 「...うそ」 「嘘じゃない」 「でも...っ」 雅樹が、優しく、でも力強く悠星をぎゅっと抱きしめてきた。 その温かさに包まれたとたん、反論しようとしていた口がゆっくりと閉じていく。 「これからも、言っていくから。全身で、悠星が好きだって伝えるから。だから、安心してゆっくり考えて。俺はずっと、待ってるから」 雅樹の真剣な告白に、悠星は何も言えなくなってしまった。 ただただ挨拶代わりに言ってくるものだと思ってた。からかっているだけだと思ってた。ここまでの思いが雅樹にあるとは思わなかった。 見ようともしなかった。 いや、知らない。...知らないよそんなの。 「...夢だから。そんな都合のいい事言ってくるんでしょ」 「...うん、今はそれでもいいよ」 「...うっせ」 夢だから。これは、夢だから。 甘い言葉も、心地いい言葉も、どうせ起きたら消えている。 ...それならば、この腕の温かさも、目が覚めれば消えてしまうのだろうか。 それは...なんか、嫌だ。 自分で自分の心にチクチクと針を刺していることに気付かぬまま、悠星の意識は深い闇へと落ちていった。

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