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第16話

季節が春から夏に移ろうとしていた。 この時期はずっと雨続きでなんとなく憂鬱とした空気が流れていたが、今日の天気は久々の晴れだった。 それが分かった途端、翔太が意気揚々と悠星へある提案をしてきた。 「悠星!明日暇?」 背中をつつかれた悠星が後ろを振り返ると、にこにこと嬉しそうにしている翔太がいた。 「うん、何で?」 「どっか行かね?せっかく晴れるし」 晴れるから、という可愛らしい理由に悠星は小さく笑った。 「…ふっ、いいよ。でもどこ行こうか」 「うーん…あ、最近出来た○○駅のショッピングモールは?俺スパイク見たい!今の結構古いし」 翔太は小学生の頃からサッカーをやっていた。 普段はサッカーか寝る(と結構の割合でエロイ事)しか頭の中にしかないサッカーバカ(本人談)な彼は、高校の1年でもうレギュラー入りを果たすくらいのプレイヤーだ。 対して悠星は、中学の頃は陸上部で長距離の選手だった。 高校生になってからは部活はどこにも所属せず、たいてい放課後は図書室通いをしていた。 「…行くのはいいけど、部活の友達とじゃなくていいの?」 サッカーのスパイクに関して自分は無知だという意味を込めて尋ねると、翔太は不機嫌そうな顔をしていた。 「俺は悠星と出掛けたいんだよ。休日にどっか行くとか今までないじゃん」 確かに言われてみれば、翔太の休日は練習や試合で埋まることが多かったし、放課後一緒に帰ったとしてもコンビニに寄るくらいしか今までしなかった。 「…そうだな。行こう」 悠星がそう返すと、翔太はとても嬉しそうに笑った。 「やった!じゃあ明日10時に駅前な」 翔太のテンションの上がり具合に、悠星は思わず笑ってしまった。 翌日。 気象予報士のおじさんが言っていた通り、空には青空が広がった。 悠星の今日の服装は、白地に黒のボーダーTシャツに紺色の開襟シャツ、下は黒のスキニーと紺色のスニーカーだった。 割と一人で居る方が好きで”友達”と出掛けることが多くなかった悠星は、ほんの少しだけ緊張していた。そして、楽しみだった。 翔太が誘ってくれた時も、本当はとても嬉しかった。しかし恥ずかしくてあまり素直に喜べなかったのだ。 翔太に会ったら、何て言おう。 おはよう!元気?私服かっこいいね!昨日は楽しみすぎてあんま寝れなくってさ… ………いやいやいやいや誰だこれ!!ふつーに怖えわ! うん、普通にしよう、普通に… 頭の中でぐるぐると思考を巡らせていると、いつの間にか駅に着いていた。 そして―――複数人の女子に囲まれている翔太を見つけた。

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