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第17話
翔太はVネックの白Tに薄手のカーキのジャケットを羽織り、軽くダメージが入ったジーンズを履いている。
悠星は、翔太はもっと派手な私服をイメージしていたのでシンプルな服装に少し驚いた。
彼は今、看板近くに立っていた。それだけなのにめちゃくちゃ様になっている。
そして女子に囲まれた翔太を見て悠星がまず思った事と言えば。
漫画みてぇ…
学校でも、遠巻きに女子の視線を集めているのは普段から感じていたが、ここまで露骨な光景は初めてだったのだ。
ある意味未知なものを見つけた時のような視線で翔太をじっと見ていると、彼がこちらに気づきふっと笑って手を振ってきた。
「悠星!そんなとこで何してんだ?」
翔太の声にハッとなり、自分が棒立ちだった事に気付く。本来なら呼ばれたので彼の所へ行きたいが、今はその勇気は無い。今翔太の周りにいる女子達の視線が全てこちらへ向いているからだ。
「えー、カッコいい!お友達ですかー?」
「あの子も一緒に遊ばない?」
女子たちはめげずに、むしろ翔太を更に強引に誘っている。彼女らの行動力に逆に感心していると、渦中の翔太が終始笑顔を崩さず、とんでもない一言を言い放った。
「俺ら今からデートだから。ごめんね」
開いた口が塞がらないとはまさにこの事か。女子たちと悠星が唖然としていると、爽やかな笑みを浮かべた翔太がこちらへと歩いてきた。
「…デ、デートってなんだよ!」
「え?嫌だった?」
「嫌とかそういうんじゃなくてっ」
「ま、何でもいいじゃん。早く行こうぜ!」
ニカッと笑った翔太が、悠星の手を強引に引っ張って歩き出した。
―――――――――――
悠星と翔太は今、ショッピングモール内のスポーツショップ店に居た。翔太が欲しかったスパイクを見に来ている。
「今使ってるやつさあ、中学の頃からなんだよね」
「え、そんな使ってんの?」
「中2の冬休みあたりかな。だから1年以上くらいは使ってるかも」
「結構保 ったな」
「まあ受験あったし」
「ああそうか」
そんな話をしながら、翔太は気になったものを手に取ってみたりしていた。
悠星がふと反対側へ目を向けてみると、そこは陸上のコーナーだった。ランニングシューズや練習着が並んでいて、気付いたら悠星は目を背けていた。
「悠星」
翔太が悠星の暗い顔に気付き、静かに声をかけてきた。
「ん?」
「どうしたの?」
「え?」
「何かぼーっとしてるから」
悠星は言われてハッとした。
「何でもないよ。ごめん」
焦りが出ないよう努めて明るく振る舞ったが、翔太はそれで納得しなかった。
「ねぇ、言いたくなかったら無理には聞かないけどさ…」
「うん?…あっ!!」
悠星が店の外に何かを見つけ、小さく叫ぶ。翔太が何事かと聞く前に、悠星は彼の腕を引っ張って一緒にしゃがんだ。
「えっ、何!どうしたの!?」
「しっ!!」
口に人差し指を当て、店の外を見ながら小さな声で一言囁いた。
「…雅樹達がいた」
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