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第22話

悠星は、ナポリタンに視線を向けたまま話を続けた。 「安心したんだよ、正直。嬉しさすらあったかもしれない。でも…本気で悔しがる仲間達が羨ましかった。同じ時間をかけて来たのに、俺はこいつらとは違うのかって…泣きたくなった」 悠星の顔が歪む。翔太は手を止めて黙って聞いていた。 「本気でやってる奴らからしたらほんと…イライラすると思う。でも、俺だって中途半端やってたわけじゃない。真剣にやってた。…いや、結局はつもりだったのかな」 そこまで話して、悠星は顔を上げた。翔太と視線が絡む。 「"部活"が、息苦しかったんだ。みんな目標に向かって、大会でより上に行くために、勝つ為にやってる空気感について行けなかった。…俺は走りたかっただけだから。だから、部活には入らない。…本気でやってる人達の中に、俺はもう居れない」 悠星は全てを話し終えた。 翔太は、難しい顔をしていた。そんな翔太の皿は既に空だった。 …何も言わない翔太が怖い。 悠星は急いで残りのナポリタンをかき込んだ。 実際のところ、ここまで詳しく話したのは翔太が初めてだった。悠星が部活を続けないという選択に、親も友達も不思議がり、理由を尋ねて来た。俺は部活に向いてないと。一人で走る方が好きだと。悠星はそう言うが、続けてみたら変わるとか、たった3年で諦めるなとか見切りを付けるのが早いとか。こちらの話を聞くフリをして、みな自分の意見を押し付けて来た。こちらの話を真剣に受け止めてくれる人は居なかった。 もしかして、翔太も呆れたのだろうか。 見切りを付けるのが早いと言うのだろうか。 本気でやってないからそんな事を言うんだ、と思ったのだろうか。 翔太をチラチラと横目で見ていると、彼と目が合ってニコッと微笑まれた。 きょとんとしている悠星に翔太は言葉を紡いだ。 「話してくれてありがとな」 「…ん?」 「理由。教えてくれてありがとな」 「…なんで?え?てかそれだけ??」 何故自分がお礼を言われているのか、悠星は分からなかった。むしろこんな辛気臭い話を聞いて嫌がると思ったのに。 「なんでって、話しやすい話じゃなかっただろ?でも真剣に話してくれたじゃん。俺はその事自体がまず嬉しかったからさ」 今までそんな事は言われた事も無く、悠星は何と返せばいいか分からなかった。 「それに…悠星の本気で感じた事とか決めた事は悠星のものだろ?もし悩んでるとか意見が欲しいとか、明らかにいけない事だと思ったら何か言うかもしれないけど、今回は俺から言う事は何も言う事はないよ」 「…」 「ははは、ある意味これって放任主義って言うのかな」 翔太が柔らかく笑う。 悠星は溢れ出す涙を止める事が出来なかった。 翔太はそっとハンカチを差し出した。

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