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第38話

「だから!嫌だって言ってるじゃん!」 「頼むよー、俺を助けると思って」 「何で助けなきゃいけないんだよ!」 「田口君、俺らからも頼むよ」 藤井に肩をガシッと掴まれ、一歩後ずさる。190センチの長身がじっとこちらを見下ろしてくる。約15センチも上から見下ろされるのは何とも心地よくないが、その見た目とは裏腹な子犬のような縋り付きを簡単に無下にするには…。 「先輩たちまで…」 非常に良心が痛む。 …さて、一体何が起こっているのかと言うと。 日に日に太陽の照り付けが強くなっていくこの頃。 今日の昼はサッカー部がミーテイングで翔太が不在だったので、悠星は教室で一人弁当を出していた。 このような事は珍しくない。大抵は翔太と過ごすことが多いが、一人の時は他のクラスメイトと食べたり一人で食べたりと自由に過ごしていた。 そして今日は早めに昼食を食べ終えて、図書館にでも行こうかと頭の中で予定を組み立てる。 …と、その時。 「あ!!いた!!」 教室後方の扉が勢いよく開いたと同時に、入ってきた二人の男子生徒と目が合った。身長差が頭一個分くらいある”でこぼこ”な2人がこちらの席に向かってずんずんと歩いてくる。まさかこちらへ来ると思わなかった悠星は、とりあえず自分の体で弁当を守るように覆い隠した。 「田口君!だよね⁉」 「え?は、はい」 小柄な男子生徒が前のめりに悠星に話しかけてくる。勢いに押されながらも相手をしっかりと見て返事をする。 周りのクラスメイト達も何事かと野次馬のごとく3人をじっと見ていた。 「ちょっと来てくれる?」 「は?え?なんで」 「俺らの為!お願い!」 返事を聞く間もなく長身のに腕を掴まれ、小柄な男は迅速に悠星の弁当を纏めて抱え持つ。 「ちょっと!どこ行くんだよ!」 何が何だか分からないうちに、悠星は二人に教室の外へ連れて行かれた。 「…あの二人って生徒会の先輩だよな?」 「うん。…なんかあいつって不憫っていうか…」 「もうドンマイだよな…ははは」 見守っていたクラスメイト達に苦笑いでそう言われていたことを、悠星は知らない。 クラスメイトの言う通り、悠星の部屋へ来た二人は神野と藤井という生徒会のメンバーだった。なぜこんなことになっているのかと説明を求めるが、一回状況を見てもらった方が早い、と碌な説明をしてもらえないまま生徒会室の前まで来た。弁当を持った神野が扉を勢いよく開けて中へと入って行く。藤井と悠星も後に続いた。

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