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第40話

「え、亮介先輩今は…」 「ああ、寝たら大丈夫だと。明日には来るって」 「そうですか…」 悠星が安心したのもつかの間、一つの疑問が浮かび上がる。 「じゃあ俺要らないじゃないですか!」 「要る」 悠星の否定にいち早く反応したのは未だ抱き着いたままの雅樹だった。 「悠星居てくれたら俺頑張れる」 「いなくても頑張れよ」 「もっと頑張るから!!悠星に居てほしい…」 どこか寂し気に言う雅樹の声色にほんの少しドキッとした。 「いや…いやいやいや、嫌だって言ってるじゃん」 「頼むよー、俺を助けると思って」 「だから何で助けなきゃいけないんだよ!」 …と、冒頭の流れに続くのだった。 危ない危ない。 なかなか見ない弱った雅樹の姿に一瞬絆されそうになったけど、俺が助ける義理は無い… 「田口君、俺らからも頼むよ」 この時点でもう既にかなり絆されかけていることに気付いていない悠星に、藤井が最後の一押しをしてきた。前から雅樹抱き着かれ、横から藤井に肩を掴まれ、神野からキラキラした目を向けられ。。この異様な雰囲気に一歩後ずさる。 「先輩たちまで…」 「夏休み入るまででいいんだ。やってもらいたいのは、作った資料の印刷とかホチキス止めとかっていう簡単なことと、雅樹君のモチベ維持」 「ん?」 藤井と反対側にいる神野がにこにこしながら説明する。ただ最後の一言が聞き捨てならなかった。モチベ維持?? 「月曜日、雅樹君と亮介君と一緒にご飯食べてるんでしょう?」 「えっ、あ…はい」 そんな事まで知られてるのか。 「放課後の生徒会、雅樹君いっつも機嫌がいいんだ」 「…」 抱き着いてきてる雅樹を見ると、雅樹もこちら見てきてにこっと微笑んだ。 その笑顔が凄く自然で可愛くて…可愛いと思ってしまって、悠星はバッと顔を逸らした。 なんか…なんかこう、他の人から聞くのはとても恥ずかしい。 「俺らとしても、猫の手も借りたいぐらいの状況でさ。メンバーが増えるのも2学期以降だし…。だからこの一か月、短期バイトみたいな感覚で引き受けてくれないかな。まあバイト代はないけど…」 あ、僕のお菓子で良かったら食べる?と、へへへと神野が恥ずかしそうにに笑う。 雅樹からの”お願い”だったら聞く義理がないと突っぱねていたが、2人の先輩達の”お願い”を…、しかも今ここにはいない亮介の事を考えると、突っぱねる明確な理由は今の悠星の中には無かった。 幸い期末試験は終わったし、夏休みまであと2週間弱。亮介もいるし、神野と藤井もいい人そうだ。雅樹と二人きりになることも多分、無い。 「…分かりました。でも、あんまり役に立たないかもしれないですよ?」 「「ありがとう!!」」 悠星が困ったように笑いながら承諾すると、両サイドから藤井と神野にお礼を言われる。 正面からは、声が聞こえない代わりに雅樹の抱き着きがより強くなった。 こうして悠星は、1学期終了まで生徒会で臨時バイト(仮)を引き受けることになったのだった。

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