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第44話
翔太の笑顔を見て安心した悠星は、以前から考えていたあることを提案した。
「なあ、夏休みどっか行かないか?」
「!それ!俺も言いたかった!」
バッと顔を上げて翔太が嬉しそうにした。やっぱり犬みたいに尻尾をぶんぶん振るような翔太の態度に悠星はまた笑った。
早速行き先を話そうかというタイミングで授業開始の予鈴が鳴ってしまったので、続きはお昼に持ち越した。
4時間目が終わると同時に翔太が悠星の席へ来た。
「悠星!行こうぜ」
「おう」
翔太の言葉に悠星は席を立ち、生徒会室に向かった。今日のお昼は1学期最後の”ピクニック”だった。最近は本格的に日差しが厳しいので、涼しいこの部屋がかなり快適だったりする。
「夏休みどうする?」
廊下を歩きながら翔太に尋ねられ、悠星は場所を思案した。
「あー…、プール、祭り、映画…日帰りで旅行とか?てかお前部活は?」
「連続しての休みがあんまないからなあ…」
スマホで写真を撮ったスケジュールを見ながら翔太は眉を寄せた。悠星も翔太の手元のスマホを一緒になってのぞき込む。
「うわ、結構みっちりだな」
「まあな…でも午前か午後どっちかは空いてるよ。あーでも合宿とかも入ってくるらしいから完全オフの日は…」
「ここの週末は…わぷっ」
つい話に夢中になっていて誰かにぶつかってしまった。後ろへよろめく前に”誰か”に手を引かれた。
「おっと…大丈夫か?」
顔を上げるとそこにいたのは亮介と雅樹だった。雅樹からは軽く手を振られる。翔太だけがうす、と言いながら軽く頭を下げていた。自分の腕を支えてくれていた亮介は丁度、生徒会室の扉を開けようとしている。
「はい、すみません」
悠星が謝ると、亮介はにこりと優しく微笑んだ。
「気をつけろよ。…で、何を話してたんだ?」
「えっと…」
悠星が雅樹をちらりと見る。一瞬迷ってから、ゆっくりと口を開いた。
「夏休み、どうしようかって話…」
涼しい生徒会室で長机を二つ繋げて弁当箱を広げた。今日も各人おかずを持ち寄っている。悠星はピーマンの肉詰め、亮介は肉じゃが(二人とも昨日の残り物)、翔太はちくわにキュウリを詰めたもの(前回はチーズ、その前は固い人参だった)、雅樹は卵焼きだった。
「夏休みかあ」
雅樹がピーマンの肉詰めを取りながら呟いた。
「先輩たちはどうするんすか?」
翔太がおにぎりを頬張りながら尋ねる。
「そりゃもちろん悠星と…」
「いや俺ら何も話してねーだろ」
「夏休み…あ」
亮介がふと何かを思い出したように呟き、苦い顔を見せた。
「叔父さんのとこ手伝わないと…」
「ああ、あれか…」
2人してがっくりと肩を落とす様を、悠星と翔太は不思議そうに見つめた。
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