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第46話

そして迎えた終業式。 ――の、放課後。 「終わっ、たーーーー!!!」 両手を天井に向かって思い切り伸ばした神野の声が生徒会室を満たした。それを皮切りに他の面々も仕事を終えていき、張り詰めた顔を緩めて皆笑顔を浮かべた。 悠星も、出来た資料をファイルに挟み棚にしまい、ほっと息を吐く。この2週間の忙しい日々がこれでようやく終わったのだ。 「悠星くーーーーん!!!」 「おわっ!!」 棚にしまい終えたのを見計らったように神野が後ろから飛びついてきた。棚に手を付きすんでの所で激突を避ける。棚も一緒に揺れるがファイルの雪崩(なだれ)が起きる気配は無い。 「お疲れ様!!本当に助かった!!ありがとう!!!」 悠星よりも背の低い神野が、こちらを見上げながら満面の笑みで笑っている。自分の周りにいる人達はみな背が高くて見上げるばかりなので、見下ろす(※そこまで身長差は無い)のはいつもと違って新鮮だ。 「こちらこそ。お役に立てたのなら良かったです」 なんだか小動物感のある神野に笑って応えると、急に彼の身体が離れていった。視線を上げるた先には、何か面白くなさそうな顔をした雅樹が神野の首根っこを掴んで引き剥がしていた。 「何勝手に抱きついてるんだよ」 「えー?今日ぐらいいいじゃん」 「ダメ。俺以外絶対ダメ」 「いやいやお前専用じゃないからな??」 悠星の冷静なツッコミに横で見ていた藤井と亮介が笑った。 「でも本当にありがとう。悠星が居てくれて良かった」 亮介に真正面からお礼を言われる。そんな…、とは口で言うものの、素直に嬉しかった。亮介の言葉はいつも真摯で真っ直ぐなので、スッと胸に入ってくる。 「なぁ悠星、生徒会入る気はないか?」 「…え?」 その言葉は雅樹からだった。思わず真意を探ろうと訝し気な顔をした悠星を見て、雅樹は困ったように笑う。しかしすぐに真剣な顔で話を進めた。 「2学期になってメンバーももちろん増える。だけどこの2週間の悠星の仕事ぶりは本当に良かったよ。これから行事も増えるから今よりもっと忙しくなる。だから無理にとは言わないけど…、一緒にやってくれたら、嬉しい」 雅樹が自分という存在を(よこしま)な意味抜きで評価してくれてる。お世辞だけで言ってるのかとも一瞬思ったが、彼の目を見てその可能性は消えた。

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