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第48話
そんなこんなもあって今年の夏休みは今までになく充実していた。翔太と映画に行ったり、別の日には仲良くなったサッカー部メンツ(もちろん翔太がいる)と遊びに行ったりもした。
8月に入って数日が経った日の夜。悠星が部屋で夏休みの課題をしていると、スマホが着信音を軽快に鳴らした。画面を見てみると深月からだった。珍しい電話の相手に悠星は少々たじろぎながらも電話を取る。
「…もしもし」
『あー悠星?何してた?』
「課題」
『真面目だねー』
「いやめっちゃ出てんだよ。さっさと終わらせないと」
少しむくれた悠星の声音に深月は電話の奥で声を上げて笑った。
「つーか電話なんて珍しいじゃん。どうしたの?」
『声が聴きたかっただけ』
甘い響きを含む深月の声が右耳をくすぐる。思わずスマホを持ち替えて右耳を思い切り擦った。
「なっ、なんだよいきなり!彼氏か!!」
『ははは、いいなそれ』
「よくねーから!」
いつも深月に翻弄されるこの状況はやはり解せない。いつか逆転したいと思っているが、中々それが叶わない。
『まあいいや。なあ明日暇?』
「明日?」
ていうかやっぱ本題は別にあったじゃないか…
ツッコミは内心だけにとどめ、悠星は卓上カレンダーに身を向けた。するとそこには、明後日から3日間海の家に行く予定が入っていた。
「あー…、時間による。あんま遅いのは無理」
『なんで』
「明後日から翔太達と泊りに行くんだよ」
『2人でか?お前ら随分仲良くなったな』
「いやあと2人……雅樹と亮…生徒会の先輩の4人で行くんだ」
雅樹の名前を口にするのは、少々ためらった。しかし深月は俺と雅樹のいざこざを知っている。だが後からバレるよりは正直に話しておく方が賢明だ。
「しょ、翔太も居るし!2人きりにならないように気を付けるからさ!!だから…」
いきなり喋らなくなった深月に畳みかけるように言い訳をしていく。そこでようやく深月の深いため息が聞こえた。
『何慌ててんだよ』
「…だって深月なんも言わないじゃん…」
『それは…そうだな、悪かった。でもお前もお人好し過ぎないか?よくアイツとまだ一緒に居ようと思えるな?』
そう言われてしまうともう黙るしかない。悠星自身にも分からないのだ。今の雅樹への想いには見て見ぬふりをしているのだから。
「今回のは…。最近俺が忙しくて翔太が寂しがったから…」
『ふーん。翔太の為に、か』
「あ、嫌々じゃねーよ?俺も翔太と遊びたかったから…」
『分かったって。苛めて悪かったな』
「苛められてねーし!」
はははと笑った深月の明るい声音に悠星はようやく安心した。
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