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第49話

『明日さ、近所の神社でお祭りあるじゃん。一緒に行かね?何なら泊まって行ったら次の日駅まで連れてくよ』 「…でも仕事は?」 『明日は定休日、明後日は朝いつもそんなに早くないから…。明後日は何時に待ち合わせ?』 「朝8時に駅だけど…」 『じゃあ俺も大丈夫。どう?』 どう…しよう。 深月とこうした催しに出かけることは、今まで数えるほどだが幾らかあった。もちろんその後のエッチ込みで…。 「"次の日に響くような事"は無しね」 『……。それって誘ってる?』 悠星のぼそっとした声を聞いて、一瞬間を開けてからニヤニヤを隠さず深月は尋ねた。 「誘ってない!それがあるなら俺は行かない!!」 悠星は動揺を隠しきれず、深月に畳みかけるように怒った。顔から湯気が出る。ただでさえ寝苦しい夜になって来ているというのに、顔が火照ってて仕方ない。 『はいはい分かりました。お前から誘われない限り手は出さねーよ』 くくっと喉を鳴らし深月が笑う。相変わらず深月には勝てなくて、悠星はわざと大きくため息をついた。 「俺から誘わねーからな。…明日どーすればいいの」 『浴衣持ってる?』 「え…あ、うん、持ってるけど」 悠星は荷造りしてあるキャリーケースに目を向けた。その中には浴衣も入っている。お祭りもあるから浴衣必須で!と雅樹が1人テンションを上げていた。悠星の浴衣は紺地に灰色のラインが入ったシンプルなものだ。帯も薄めの灰色で、横に紺や黒のラインが入っている。ただ着付けは一人で出来ないので、向こうで誰かにやってもらうつもりだった。 『それ明日持ってこい』 「え!?なんで!!」 『俺が見たいから』 「…っ!!」 気のせいか??最近こんな風にサラッと直球で伝えてくることが多くなった気が…いや、いつもの事だな。ただ心臓にわりぃんだよ… 再び赤くなった顔を手で仰ぎながら、悠星は言葉を続けた。 「…深月、着付け出来んの?」 『おう』 「マジで!?意外なんだけど」 『それよりお前は出来んのか?出来なさそうだな』 「うぐっ。…まぁ、出来ませんけど?」 悔しい。何でこうも見透かされているのか… 『ははっ、だろーな。じゃあ教えてやるよ。明日11時に荷物持って俺んち来い。場所は後で送るから』 「早くね?」 『ちょっと買い物付き合え。まぁそんな長い時間居ないから安心しろ』 「安心っていうか…。分かったよ、明日11時な」 『おう、待ってる。じゃあおやすみ』 「うん、おやすみ」 電話を切った悠星は、もう一度荷物確認をした。浴衣が目に入った時、知らず知らずのうちに口角が上がっていた事に、自分では気付いていなかった。

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