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第55話
お祭りから帰ってきた二人は、既にお風呂を済ませて同じベッドに寝転んでいる。因みに悠星は断ったが深月が許してくれなかったのだ。
深月に後ろから抱きしめられ、首筋に息が当たる。くすぐったさに身をよじろうとするが、逃げると思われたのか尚更締め付けが強くなる。
「~~~!息がくすぐったいんだよ!!」
「へー?…じゃあこれは?」
「っ!」
わざと耳元で低音で囁かれ、体の奥がずくっと震える。
こいつわざとやってる…!
「深月!今日はそういうの無しって言った!!」
悠星が前に回されている腕をバシバシと叩くと、深月は笑ってようやく腕を緩めた。
「はいはいごめんて」
「…別に、嫌ではないからな」
彼の呟きに、深月は目を丸くした。髪の間から覗く耳が赤くなっているのを見て、自然と口元が緩んだ。
「もう寝るからな!明日寝坊すんなよ」
悠星はそう言ってタオルケットを胸元まで持って行く。深月はもういたずらはやめ、彼の頭を自分の胸に寄せるようにしてもう一度優しく抱きしめた。
「悠星」
「…何」
「着付けしてるときさ、俺だけずっと変わってない、って言ってただろ?」
「っ!…んなのもう忘れていいから」
「変わったよ、悠星は」
その言葉と同時に深月がきゅっと悠星を抱きしめる。
「地に足付いてるっていうの?目を離した隙に居なくなりそうな危うさが無くなった。自分で自分の事も沢山知っていったから、そういう悩みが出て来たんだろ?」
「深月…」
「俺が知る限りじゃ、出会った頃よりずっと大人になってる」
「…」
「まあ、他人と過ごしてるんだから比べるのは仕方ねえ。人間だからな。ただ、お前にはお前のペースってもんがあるのは覚えとけよ」
後ろから頭をポンポンと叩かれてむず痒くなった悠星は、ぐっと手元のタオルケットを引き寄せた。そして、
「…ありがと。…おやすみ」
小さく呟いた悠星から、少しして静かに寝息が聞こえ始めた。
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深月は、自らの腕の中で眠った彼を抱き寄せる。
「んん…」
彼の可愛い声を聞きながら、首筋へ唇を寄せて強く吸った。襟足にぎりぎり隠れるくらいで赤い花が咲く。
明日。本当は行かせたくなかった。でも翔太との、友達との遠出を楽しみにしていたから。大人気ない気持ちは隠して送り出す。
…ちゃんと、俺の元に帰ってきますように。
彼を抱きしめて、深月はようやく眠りについた。
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