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第60話

「じゃあ」 そんな悠星達の挨拶を見計らって、美香がパンと手を叩いた。 「着いて早々悪いけど、二人とも着替えて準備してくれる?あとでもっと詳しく説明するけど二人には主に接客をやってもらうつもりだよ。雅樹に教えてもらってね。あ、お昼休憩はみんな交代で取るからね。15時ぐらいに長めの休憩入ってもらうから」 「「はい」」 「何か分からない事は私何でも聞いてくれていいからね。じゃあ宜しくお願いします」 「「よろしくお願いします!」」 こうして、いつもと少し違う夏休みが始まった。 店内は、陽が高くなるにつれてどんどん混んできた。昼食休憩に来ただけではなく、”彼ら”目当てで。 「イケメンだねー!えっ、高校生?同い年だー!」 「ねえこの後暇?お姉さん達と一緒に遊びに行かない?」 「これ連絡先。よかったら今度デートしない?」 そんな肉食女子達の勧誘をさらっと交わしながら、悠星以外の三人はスマートに接客をこなしていく。 慣れすぎじゃねあいつら… 注文をキッチンに伝えたところで、水分補給をしながら遠目に彼らをじっと見る。また戻ろうかと立ち上がりかけた時、頭にくしゃりと手の感触がした。 見上げるとそこには、片手に焼きそばを盛った皿を手に辰正が立っていた。 「悠星?大丈夫か?熱中症?」 「あ、いえ!大丈夫です!すみません」 慌てて立ち上がりながら、悠星は苦笑した。 「翔太はともかく…。雅樹と亮介先輩、モテますね…」 「それな。まあおかげ様で繁盛してるよ」 「ははは、確かに」 悠星は笑って焼きそばを受け取った。 「じゃあこれ3番テーブルによろしく。何かあったらすぐ言えよ?無茶すんのが一番危ねえからな」 「はい、気を付けます」 悠星の後ろ姿を見ながら、辰正はフッと笑った。 「お前も結構モテるよな~」 辰正の言う通り、悠星も結構モテた。慣れない接客に奮闘している姿が”可愛く”見られている事を、本人だけが知らなかった。 何でみんな俺の頭撫でてくるんだろう… 答えの出ない疑問が頭の片隅に残りながらも、辰正から渡された焼きそばを三番テーブルに運んだ。 「お待たせしましたー。焼きそばです!」 元気よく届けたそのテーブル席には、男4人が座っていた。 「あ、はいはーい」 茶髪の男が手を挙げたので、男の側まで回って焼きそばを置いた。 「ねえお兄さん達ってお友達なの?」 キッチンの方まで戻ろうとした時、茶髪の男が雅樹を指さしながら声を掛けてきた。

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