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第66話

結局、悠星の照れたエピソードに悶絶した雅樹が、早めに着付けを終えた亮介を翔太の着付け担当にする事でその場は収まった。そして何とか着付けを終えた悠星達は、4人揃って祭りの行われている神社へと向かった。 「というか先輩達浴衣すげー似合いますね…」 翔太が前を歩く雅樹と亮介を見ながらしみじみと言った。 「ほんと…何でも似合うとか羨ましいわ…」 その横で悠星も半分不貞腐れながら肯定した。 亮介は黒地に灰色のラインが入った浴衣で、青地に白と灰色のラインが入った帯を締めていた。その反対に雅樹は白地に黒ラインの入った浴衣に、黒の帯を締めたものを着ていた。二人とも着ているもの事態は至ってシンプルなデザインだが、大人っぽさがより際立っている。普段とはまた違った色気が引き出されていた。 悠星は隣を歩く翔太をチラッと見る。彼は灰色にしろと黒のラインが入った浴衣に、白や薄めの灰色がラインで入っている黒の帯を締めていた。もっと明るめの、むしろ派手な色を選ぶのかと思っていたが、意外にも手に取った浴衣は落ちついた色合いのものだった。 「お前もな」 悠星は翔太を見ながらはははとため息をついた。そんな彼を見て雅樹がそっと隣へ来る。 「お前も似合ってるぞー」 雅樹が首へ腕を回してくる。いきなり重みが掛かって思わず前のめりになるが、なんとか持ちこたえて歩いていく。 「雅樹に言われても信用できない」 「なんで⁉」 「全肯定しそうだから」 「いや、ちゃんと似合ってるぞ」 落ち込む雅樹をジト目で見ていると、前から亮介の声がした。 「悠星も翔太も、やっぱり浴衣を着ると雰囲気変わるな。いい男だな」 じっと彼の言葉を聞いていた二人は、ゆっくりと互いに目を合わせた。 「亮介先輩ってタラシだな…」 「だな…」 「でも先輩に言われたら自信つくわ…」 「すげー分かる。コイツより全っ然信用出来る」 「なんでっ!」 不満げに顔を上げた雅樹の頭を、悠星が軽く叩いた。 神社へ到着すると、既に大勢の人で賑わっていた。 「うわー、結構混んでるな」 悠星が物珍し気に辺りを見渡していると、横から雅樹に腕を掴まれた。 「悠星、はぐれんなよ」 「は、はぐれねえって!子供じゃあるまいし」 「いやもう今の時点で危ねえから」 「え」 雅樹の指さす方向では、ここから5mほど離れた場所で亮介と翔太が苦笑いしていた。一気に自分の顔が熱くなるのを自覚する。悠星はなるべく二人を視界に入れないようにしながら、雅樹に腕を引かれて二人の元へ向かった。

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