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第74話
夢を見た。
4人でお祭りに行った後、花火をやった時の事。
現地調達すればいいと思っていたらすっかり忘れていて、慌ててコンビニへ買いに行ったのだ。
目の前でキラキラ光る明かりにじっと見惚れていると、ぱちぱち光る明かりがもう一つ増えた。
視線を向けるとそこには雅樹がいて、優しく微笑んでじっと花火を見つめていた。
「綺麗だな」
花火に照らされた雅樹の顔は、それと同じくらい眩しくて。
昔と変わらない優しい眼差しに。
じわりと滲みそうになる目をぎゅっと閉じて、悠星も花火へ視線を向けた。
こんな穏やかな日が続けばいい。………いや、続いててほしかったと、そう思いながら。
雅樹が寝ている悠星の方を見ると、彼は一筋の涙を流していた。そっと涙を指で掬い、目元に優しくキスを落とす。
穏やかな顔になった彼をみて、雅樹もそっと微笑んだ。
その時、スマホのバイブ音が小さく鳴った。自分のスマホを見てみるが、画面は暗いまま。悠星の手元を見てみると、今にも落ちそうなスマホが手に乗っていた。
カバンに仕舞っておこうとスマホを取った時、偶然通知欄が見えてしまう。
何の気無しに目に入ったメッセージは、深月からのものだった。
『了解。待ってる』
たった二言の短い言葉を見た時、数十分前の悠星とのやり取りを思い出した。
不自然にこちらを避けるような態度。どこか気まずそうな視線。それでいて明らかにこちらを意識している悠星。
返信を見られたくないなどは誰にでもある事だ。だがその態度に違和感を覚え詰め寄ると、案の定バツの悪そうな顔を見せたのだ。
…もしかしたら。
この後起こるかもしれない未来に、雅樹は眉を顰める。
悠星の手をぎゅっと握って眠りについた。
「次は~終点、○○、○○です」
かすかに耳に入ってくるアナウンスに、悠星は目が覚める。
降りる準備をしなければと体を起こすと、なぜか雅樹と手を繋いでいた。
「…っ!!」
思わず叫びだしそうになるのを寸でのところで思いとどまり、雅樹を起こそうと彼を見る。長いまつ毛に整った顔立ち。女の子が放っておかないこの美男子は、男の手を握って一体何がしたかったのだろう。
…さっさと彼女でも作ればいいのに。
熱いくらいの繋がれた手は見て見ぬふりをして、雅樹を揺さぶって起こした。
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