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sideさくら 「さくらちゃん、あの、言いにくいのですが…」  朝食を食べ終わって、俺が台所で後片付けをしていると(最近、休みの日の食器洗いは俺が担当しているんだ。偉いだろ?)、テーブルでスマホを片手に真剣にメールを読んでいた怜が声をかけてきた。 「何だよ? 怜」  俺はスポンジで皿をこすりながら聞いた。 「あのですね…えーと……それが、以前、血を頂いていた女性が……」  すぐにピンときた。きっと怜に会いたいんだな――。 「エロOLが会おうって言ってきてるんだろ?」  俺がそう聞くと、怜が申し訳なさそうな声で答えた。 「はい…そうなんです。どうしても会いたいと言っていて…」 「あー…。会ってやったら良いじゃん」  俺はそう答えた。だって、うやむやのまま連絡しなくなるって、相手に失礼じゃないか。怜とその女がセックスと吸血だけの仲だったのか、もっと違う意味で親しい関係だったのかは、全然わからないけどさ。  少し気になるけど、俺達が付き合う前の事だから、気にしていたらきりがない。だって、 怜は星の数ほどの女と付き合って、愛を交わしてきたんだろうから――。 「良いんですか?」  怜がとても驚いたように言った。 「ホントは嫌だよ。でも、『人生のパートナーが出来たから、もう会えない』って話して来てくれるなら良いよ」  怜のセックスを知った女性が、怜から素直に離れてくれるのか、ちょっと心配だけど…。 「はい、ちゃんと話をするつもりです」  昔の怜はどうだったか知らないけど、今の怜は、「きちんと話をつけておくべきだ」って思っているはずだ。それが俺の知っているくそ真面目な怜だから。 「出来れば、セックスはしないで欲しいけど…」  正直に伝えた。エロOLと会って、やらないで帰れるのか、わからないよな。 いくら真面目だとは言え、怜もエロおやじだから、裸で抱きつかれたり、突然咥えられたりされたらイチコロなんじゃないかな。 「はい、もちろんそのつもりです――」  怜がやらないと言い切った。でも、エロOLに話が通じるのかどうかなんてわからない――。 「まぁ、『これが最後だから…』って言われるかもしれないよな。もしそうなったら、やってきても良いよ。で、えーと、その代わり、俺もソープに行ってきていい?」  怜と話をしていて思いついた。いつも行っていたソープで、ずっとお願いしていたルリコさんに、「俺、恋人が出来たんだ」って話をしておこうって。しかも恋人は男なんだよって。ルリコさんの反応が見たいってのもあるし、もう来れないと思うとも伝えたかった。 まぁ、わざわざ伝えに行く必要は一つもないとも思っているけどね…。

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