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side さくら 「さくらちゃん!」  俯いたまま改札を出ると、怜の俺を呼ぶ声が聞こえた。慌てて辺りをキョロキョロ見回すと、柱の陰から怜が俺を手招きしていた。  隠れてないでお前が来いよ…と思いながら柱のそばまで歩いて行くと、怜が俺を見てホッとしたように微笑んだ。 「良かった、やっと会えました」  怜は俺の身体に腕をまわすと、軽くハグをした。 「お、おう…何だよ…俺、LINE送ったのに…」  本当は嬉しかったんだけど、怜がLINEを見てなかったし、外でハグされたのが恥ずかしかったので、俺は素直に笑顔が出来ないでいた。 「すみません。スマホの充電が切れてしまって…」  怜が俺を見て、申し訳なさそうな顔をした。 そんな理由あり得ない! って思ったけれど、怜は充電がなくなるギリギリまで放っておくことがあるから、あり得ないことでもないか――。 「まったく…出かける前には、ちゃんと充電しておけよ…」  ぶっきらぼうにそう言うと、怜が頭を下げた。 「ごめんなさい、さくらちゃん…。でも、もっと早く帰れると思っていたから――」  俺は怜がまだセフレだった女の所に居るのかと思っていたので、俺の事を駅前で待ってくれていたことが本当はメチャメチャ嬉しかったのだ。 だけど、ちゃんと連絡が取れれば、もう少し早く会えたのに……。 「ま、いっか。待っててくれてありがと」  俺が気持を切り替えてそう言うと、今度は怜が少し不満そうな顔をした。 「遅いので、心配しました…一度家に帰ってみたんですよ…」 「だって俺、怜からの連絡待ってたんだよ、向こうの駅で…。電車だって何台か見送ったし。ホントは隣駅のイタリア料理の店に行こうって誘いたかったのに、怜がまだOLとやってんのかと思ったら、すげー嫌な気分だった…」  ブツブツと呟くように言ったら、不満そうだった怜がすぐに嬉しそうに目を輝かせて、俺の手を両手でギュッと握った。 「さくらちゃん、今からでも良かったら、そのイタリアンのお店に行きませんか?」  小首を傾げながら怜が言った。何だか女の子みたいな仕草だな――。 そう思ったら急に、セックスしている時の怜を思い出して身体が疼き始めた。セックスの時の怜は、きっちりリードする男らしい怜なのだけど、普段の滑らかな仕草や物腰は、どちらかと言うと女性的なのだ。実はそのギャップも俺は大好きで――。 「ん? もう良いよ。怜の顔見たら安心して、早く帰りたくなったから。それに――」  俺は周りに聞こえないように、「やりたくなっちゃったし」と付け加えた。そう言った俺に、怜は少し困ったような顔をしていたけれど。

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