9 / 24
強く 抱きしめて 9
すっきりと目覚めたボクは、剛さんを起こさないように、そっと布団を抜け出して、裸の体のまま寒い部屋の中を突っ切って、バスルームに行って軽く体を洗う。
体にこびりついた色んな体液を洗い流して、ボクは寒いのを我慢しながら下着とジーパンとセーター、靴下を履くと、朝食を作るためにキッチンへ向かった。
剛さんは和食を好むので、お味噌汁とご飯と、アジの開きを焼いて、納豆と出汁巻を用意する。
毎日朝ごはんはこんな感じのを食べている。
お仕事の日はお昼はお弁当を作っているので、もうちょっと忙しいけど、今日は非番だからお弁当はいらないので、だいぶ楽だった。
そろそろ剛さんを起こそうと思っていた矢先に、リビングのドアが開いて剛さんが現れて、そのままボクのいるキッチンまで来た。
やっぱりシャワーを浴びていて、剛さんはジーパンとパーカーを着て、軽く欠伸を(あくび)しながら現れた。
「おはよう」
「おはようございます」
毎日の朝の挨拶。
もう慣れたつもりだけど、でもやっぱり、毎日挨拶する相手がいるというのは、すごく嬉しい。
少し眠そうな表情の剛さんを、ちょっと可愛いと思いながら見つめて、ボクはご飯を並べ終えると、剛さんの向かいに座る。
「いただきます」
「いただきます」
剛さんは嬉しそうに、美味しそうにご飯を食べてくれる。
こうして一緒にご飯を食べてくれる人がいることが、すごく嬉しい。
剛さんと一緒にご飯を食べるようになって、ボクは体重が順調に増えて今は42kgくらいにまで回復していた。
一時期30kgに迫る勢いで、痩せぎすの骨と皮だったから、だいぶ脂肪と筋肉が回復して、ちょっと痩せている人の体型にまで回復していた。
もちろんただ太るだけじゃダメだから、剛さんと一緒に家でできる筋トレもやって、全く発達していなかった筋肉も鍛(きた)えていた。
今ではうっすら筋肉がついて、体力もついて、少し健康体になっていた。
二人で黙々とご飯を食べていると、不意に剛さんが、言いにくそうに、困ったようなひきつった笑顔を浮かべて、
「なあ、千都星・・・」
「え?何・・・?」
剛さんの硬(かた)い表情を見て、嫌な予感がして思わず身構える。
「こんなこと言うのもおこがましいんだが・・・でも、ずっと、ずっと考えてたんだ・・・」
剛さんがそんなにも言いにくいことを、言おうとしている。
嫌な予感しかしない。
まさか別れたいとか・・・そんなんじゃないよね・・・?
思い当たる節(ふし)ならいっぱいある。
わがままだし・・・強情だし・・・自立してないし・・・ウリ・・してたから、色んな男に抱かれてる・・・やっぱり汚い・・・よね?
剛さんが、恐る恐るといった感じで、ゆっくり口を開いた。
「・・・DNA鑑定・・・ってどうかな?」
「へ?」
全く予想外の言葉。
その言葉があまりに意外すぎて、意味がわからずに、きょとんとして箸をくわえたまま、剛さんを見つめる。
剛さんはお箸を箸置きに置いて、真剣な表情(かお)で真っ直ぐにボクを見つめて言った。
ともだちにシェアしよう!