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強く 抱きしめて 9

すっきりと目覚めたボクは、剛さんを起こさないように、そっと布団を抜け出して、裸の体のまま寒い部屋の中を突っ切って、バスルームに行って軽く体を洗う。 体にこびりついた色んな体液を洗い流して、ボクは寒いのを我慢しながら下着とジーパンとセーター、靴下を履くと、朝食を作るためにキッチンへ向かった。 剛さんは和食を好むので、お味噌汁とご飯と、アジの開きを焼いて、納豆と出汁巻を用意する。 毎日朝ごはんはこんな感じのを食べている。 お仕事の日はお昼はお弁当を作っているので、もうちょっと忙しいけど、今日は非番だからお弁当はいらないので、だいぶ楽だった。 そろそろ剛さんを起こそうと思っていた矢先に、リビングのドアが開いて剛さんが現れて、そのままボクのいるキッチンまで来た。 やっぱりシャワーを浴びていて、剛さんはジーパンとパーカーを着て、軽く欠伸を(あくび)しながら現れた。 「おはよう」 「おはようございます」 毎日の朝の挨拶。 もう慣れたつもりだけど、でもやっぱり、毎日挨拶する相手がいるというのは、すごく嬉しい。 少し眠そうな表情の剛さんを、ちょっと可愛いと思いながら見つめて、ボクはご飯を並べ終えると、剛さんの向かいに座る。 「いただきます」 「いただきます」 剛さんは嬉しそうに、美味しそうにご飯を食べてくれる。 こうして一緒にご飯を食べてくれる人がいることが、すごく嬉しい。 剛さんと一緒にご飯を食べるようになって、ボクは体重が順調に増えて今は42kgくらいにまで回復していた。 一時期30kgに迫る勢いで、痩せぎすの骨と皮だったから、だいぶ脂肪と筋肉が回復して、ちょっと痩せている人の体型にまで回復していた。 もちろんただ太るだけじゃダメだから、剛さんと一緒に家でできる筋トレもやって、全く発達していなかった筋肉も鍛(きた)えていた。 今ではうっすら筋肉がついて、体力もついて、少し健康体になっていた。 二人で黙々とご飯を食べていると、不意に剛さんが、言いにくそうに、困ったようなひきつった笑顔を浮かべて、 「なあ、千都星・・・」 「え?何・・・?」 剛さんの硬(かた)い表情を見て、嫌な予感がして思わず身構える。 「こんなこと言うのもおこがましいんだが・・・でも、ずっと、ずっと考えてたんだ・・・」 剛さんがそんなにも言いにくいことを、言おうとしている。 嫌な予感しかしない。 まさか別れたいとか・・・そんなんじゃないよね・・・? 思い当たる節(ふし)ならいっぱいある。 わがままだし・・・強情だし・・・自立してないし・・・ウリ・・してたから、色んな男に抱かれてる・・・やっぱり汚い・・・よね? 剛さんが、恐る恐るといった感じで、ゆっくり口を開いた。 「・・・DNA鑑定・・・ってどうかな?」 「へ?」 全く予想外の言葉。 その言葉があまりに意外すぎて、意味がわからずに、きょとんとして箸をくわえたまま、剛さんを見つめる。 剛さんはお箸を箸置きに置いて、真剣な表情(かお)で真っ直ぐにボクを見つめて言った。

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