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強く 抱きしめて 12

「お願いって・・・何?」 少し楽しそうに微笑んで、お母さんは剛さんに問いかける。 普通の人だったらその婉然(えんぜん)とした美貌に負けて、正常な判断すらできなくなるのに、剛さんは真正面から受け止めて、逆ににっこりと微笑んだ。 「はい、親子鑑定の協力をお願いしたいと思っています」 「え・・・?」 お母さんも想定外だったようで、びっくりを通り越して呆(あき)れたような顔で、口を半開きにしてポカンとしてしまった。 そのお母さんに対して、剛さんは微笑んだまま畳み掛ける。 「千都星から聞いたところによると、ご両親が千都星の出生のせいで絶えず喧嘩をしているということでした。それでしたら、親子鑑定をしてはっきりさせた方が良いと、二人で考えました」 「あ・・・貴方には関係ないでしょう」 「関係なくないです。オレは千都星が好きです。ずっとずっと一緒にいたい、傍にいたい、支えて愛していきたいと思ってます。だから、千都星の憂(うれい)は一個でも取り除きたい。それだけです」 剛さんが堂々とボクとの関係をお母さんに宣言してくれた。 わざわざ休みを取って一緒にここまで来てくれたのは、このためだったんだろう。 ボクが何も言えなくなるのをわかっていたから。 お母さんにボク達の関係を宣言して、わかってもらうため。 お母さんは剛さんの言葉を聞くと、絶句して、額に手をやると軽く頭を振った。 「好きって・・・千都星は男の子よ?」 「そんなこと知ってます。それでもオレは、千都星しか愛せないんです」 「・・・」 「お礼を言わせて下さい」 「え?」 いきなり剛さんがよくわからないことを言った。 ボクもお母さんも意味がわからずに、きょとんと剛さんを見つめてしまった。 そんなボク達の反応は想定内だったのか、剛さんはいきなり立ち上がって、深々とお母さんに頭を下げた。 「千都星を産んでくれて、有り難う御座います」 お母さんは、今までの嘲(あざけ)ったような表情を硬直させて、剛さんを見つめていた。 少しずつ、少しずつ、泣きそうな表情(かお)に変化していく。 剛さんが・・・そんなことを言うなんて思ってもいなかった。 ボクが言いたかったことを、言うなんて、思っていなかった。 ボクも慌てて立ち上がった。 剛さんに倣(なら)って、深く頭を下げる。 今まで言えなかったことを、心の奥深くに閉じ込めて目をそらし続けてきた思いを、口にする。 剛さんが背中を押してくれたから、やっと、やっと言葉にすることができる。

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