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妄執 1-5

「じゃあ早速始めようか。場所を移動するから着いて来なさい」  仁科はナイフをしまってベッドから降り、部屋の中央にある椅子の横に立った。  この男に逆らうことは賢明ではない。  孝司は恐る恐るベッドから降り、仁科の顔色をうかがいながら足を運ぶ。どうやら鎖は届くようだ。着席すると、背後から仁科が声をかけた。 「いい子だ、長瀬くん。そのまま両手を後ろに回しなさい。暴れると危ないから」  言われた通りにすると、両手首に冷たい物が触れた。じゃらりとした音から手錠がかけられたのだと知った。足枷にナイフに手錠。これらを用意して、さも当たり前のように使う男に、恐怖を覚える。  ここに来て孝司は、もしかしたら自分は生きてこの部屋から出られないかもしれないと本気で考えた。 「……あんたは俺をどうしたいんだ?」 「先生だ。私のことは先生と呼ぶように、と言っているだろう」 「せ、先生は、俺をどうするつもり……ですか?」  仁科は孝司の髪を撫でながら答える。 「長瀬くん。君は私の生徒だ。私はこれから君を教育し、素晴らしい生徒になるように指導する。なぜなら、私は君の先生だからね」  背後から聞こえる仁科の嬉々とした声に、孝司は身を震わせた。 「鋏を取ってくるよ。少しの間待っていてくれ」  仁科はそう言い残し、入ってきた扉から出て、外から鍵をかけた。  部屋に残された孝司は大きく息を吐き、緊張で強張っていた身体をできる限りほぐそうとする。

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