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妄執 1-7

「そこの扉の奥がバスルームになっている。足枷は外せないが、鎖は届くからシャワーを浴びてきなさい。着替えはまた用意しよう」  手錠を外しながら仁科はそう言い残して、孝司を残したまま部屋を出て行く。  両手が解放され楽になったが、顔や首筋にまとわりついた髪がわずらわしい。  不快感から逃れるように、孝司はバスルームへ駆けこむ。  鎖のせいで扉を完全に閉め切ることができずに、孝司は苛立った。  ズボンと下着を脱ごうとしたが、またもや鎖のせいで衣類を脱ぐことができず、シャワーを浴びることを諦め、結局顔だけを洗った。  視線を上げると、正面の鏡に自分の顔が映る。 そこにいたのは一年前の自分。 それから兄の顔。 意識をせずともしばらく連絡を取っていない兄の面影を感じ、孝司は顔をしかめる。 「俺は、お前とは違う……」  ただでさえ苛立っていた心を抉られ、孝司は先ほど髪を切り落した男を恨んだ。

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