18 / 82

妄執 3-8

「はぁ……あ、もう、やめて……」  孝司の哀願は仁科の耳に届かない。  仁科はベルトを弛めてファスナーを下ろし、自らの性器を取り出す。  それから孝司が放った精液を手に取り、ぬちゃぬちゃと音を立てて仁科自身に塗りたくった。すでに猛っていたそれは、すぐに孝司を犯す凶器になった。 「たっぷり出したね。今日の課題はこれで最後にしよう。私とひとつになるんだ」  仁科は孝司の片脚を肩に担ぎ、勃起した先端を後腔に埋めた。 「痛っ……!」 「大丈夫だよ、長瀬くん……」  凶悪なもので孝司を貫きながら、仁科はしきりに大丈夫と繰り返し囁いた。やがてすべてが孝司の中に収まり、互いの身体が密に接した。 「んぅ……っは、あぁ……あっ」 「動くよ」  孝司は苦しそうに息を吐くが、仁科はお構いなしに腰を突き上げ始める。仁科は執拗なまでに孝司の前立腺を重点的に攻めた。 「いっ、ああっ、あ……っんん!」  こんなこと望んでいない。  仁科に触れられるだけでも気持ち悪いのに、孝司の中で快楽が嫌悪感を上回っていた。 「気持ちがいいかい?」 「……気持ち、い……いや、嫌だっつ、あああ、あ、嫌……っ」  快楽に溺れる自分を認めたくなくて、孝司は悪態をついた。  嫌だ、嫌だと繰り返す孝司を、仁科は愛情のこもった目で見つめている。どうしてそんなに優しい目を向けられるんだ。チタンフレームの奥の目を見たくなくて孝司は固く両目を閉じた。  しかし孝司の若い肉体は与えられる肉欲に忠実に反応する。  三度目の絶頂はすぐそこだった。 「そろそろ限界かい?」  仁科は孝司の髪を撫でながら訊く。孝司は頷いた。 「じゃあ一緒にイこう」  仁科は孝司自身を握り、優しく、だが性急に扱き始めた。 「ひいっ……ん、あっ……ああんっ」  孝司の嬌声に反応した仁科の性器が、邪悪に胎内を圧迫し始める。  わずかに残った孝司の理性が仁科の行動を咎めようとした。 「中っ……中は嫌だっ!」 「生で出したりしないさ……今はね」  中に入れられた仁科のものが張りつめているとわかる。孝司を穿つスピードが速まるにつれて、孝司自身を扱く仁科の手のスピードも加速していく。 「嫌だっ、あ……っ、ああ、ああああっ!」 「……っ」  仁科が低く唸り、孝司の胎内に勢いよく精を叩きつける。ゴム越しとはいえ、犯された。しかし孝司もまた、仁科の手の中に射精した。 「ひ……いっ、あ…………」 「……良かったよ、長瀬くん」  仁科の顔が大写しになり、唇をついばまれる。  銀の糸が紡がれた先に見えた男の顔は、これまで出会った誰よりも喜びに満ち溢れていた。

ともだちにシェアしよう!