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妄執 5-1

 一度身体を繋げた日から、孝司は毎日のように仁科に抱かれ続けた。優しく抱かれる日もあれば、凌辱のように手酷く抱かれた日もある。  少しでも仁科の機嫌を損ねると殴られたり、首を絞められたりして、孝司の身体には痛々しい痕が増えていった。  傷痕の手当ては片山が行うが、彼は仕事が休みである土日しか来られないのだと、二度目に会ったときに告げられた。それから孝司にしかわからないように、必ず助けると約束をした。  しかし孝司はすでに時間の間隔を失い始めていた。仁科とのセックス後はほとんど意識を飛ばしてしまい、中途半端な時間に起きて、痛みで眠れない夜を過ごす、という悪循環に陥っていた。  日を追うごとに、孝司に対する仁科の態度も変わっていった。  情事の最中、孝司を長瀬くんではなく長瀬と呼び捨てるようになり、事後は必ず孝司の目を覆い、愛していると口づけるのだ。  孝司は次第に不安になってきた。最近の仁科の様子は明らかにおかしい。まるで孝司を通して別の誰かを見ているようだ。  思い起こせば、最初から仁科の言動は一方通行だった。ここにはいない誰かを求め、その誰かの代わりに孝司を抱いているかのように思えるのだ。 「……兄さん」  孝司はある人物を思い出した。仁科の想い人が孝司の兄だったとしたら、髪を切られたことも、黒く染められたことも納得できる。仁科と兄との繋がりはわからないが、ほぼ間違いないだろう。  その夜。孝司は自分の出した答えに確証を持った。

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