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純愛 11-2
仁科から贈られた服の着心地は抜群だった。シャワーを浴びて心も身体も何だかぽかぽかしている。
「サトシまだかなあ……」
孝司は仁科の帰りが待ち遠しかった。ベッドに座って待っているとドアが開いた。やはり片山だった。その手にはトレーを持っていた。美味しそうなクリームシチューの匂いが孝司の胃袋を刺激する。
「夕食はここに置いておくよ。また下げにくるから」
そう言ってトレーをベッドの端に置く。
「それから足枷だけど――」
「繋いでください」
孝司は強く言った。
これだけは片山だろうが譲れないポイントだった。
「……わかったよ」
片山は孝司の右足に枷をつけると、部屋を出て行った。
「いただきます」
こんな状況下にいても、幼い頃からの習慣は抜けない。孝司は手を合わせて小さく声を発した。口にしたシチューはよく煮こまれていて美味しかったが、孝司の胸は不安でいっぱいだった。
仁科は啓一に会って何を話すつもりだろう。
仁科はもう戻って来ないのかもしれない。すべてを悪いように考えてしまう。
「……でも、俺にプレゼントくれた」
贈ってもらった服は肌触りが良く、大学生の孝司では手が出せない上質なものだと推測される。愛されている証拠だと信じたい。
「サトシ……まだ、俺を愛してくれる……?」
しばらくして片山が下膳のために戻ってきた。
「孝司くん。実はさっき仁科から連絡があってね。帰りは夜中になるそうだ」
「じゃあ俺、それまで待ちます」
「いや、今夜はゆっくり休んでほしいそうだ」
「……あいつと会ってるんですよね?」
名前すら口にしたくない。
「どうやら学生時代の仲間で呑むらしいぞ。啓一くんとふたりきりってわけじゃない。それに、仁科は孝司くんの方が大事だから、安心しろよ。な?」
片山の言葉が嘘だとわかったが、これ以上話すのも疲れてきた。
「……そうですね。もう寝ます」
「すまないね。ゆっくりお休み」
仁科が帰るまでは絶対に起きていよう。そう思っていた孝司だが、満腹感が災いし、気づけば深い眠りに就こうとしていた。
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