51 / 82
幕間2 仁科
――あいつは俺とは違う。
私が彼と出会った時から、運命の歯車は動き始めた。
人生で初めて出逢った友と呼べる存在のおかげで、私はつまらないはずの学生時代を楽しむことができた。
学ぶ分野は違えど私たちは構内で会えば自然と話す間柄になった。
共に教師を目指しながら、私たちは次第にお互いのことを話すようになっていた。
ある日、彼は自分の家族について語り始めた。
両親が離婚して片親だということ。
父に逆らえないということ。
そして、年の離れた弟と上手くいってないということ。
下を向いて話すその姿に、自信家である彼の面影はどこにもなかった。
私は幸い家族に恵まれていた。
彼の苦しみをすべて理解することはできない。しかし、その重荷を分かち合うことならできるのではないか。
私が彼を支えてやりたい。
それは、今までの人生で抱いたことのない不思議な感情だった。
私が彼に特別な想いを抱き始めたのは、この頃からである。
ともだちにシェアしよう!