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狂想 3-2

「起きろ、啓一。君はこれからどうするつもりだ?」 「……俺はそんなに寝てたのか」 「ああ、ぐっすりとね。とにかく私はここを出る。私の私物以外の物が――もちろん長瀬くんの物も含めてすべて持ち出されている。片山が運び出したのだろう。だからここに長く留まる理由は無い。早急に去るべきだ」 「仁科。お前、帰る場所はあるのか?」 「私の心配よりも弟の心配をすべきだと思うが」  真っ当な意見だが、話を続けた。 「お前の心配なんかしてない。孝司を見つけ出すまで、お前には色々と訊きたいことがあるからな。だからしばらくは、俺の家に居ればいい」 「本気で言っているのか? 君を愛していると何度も言ったよな。邪な想いを抱いたまま君の家に転がりこんだらどうなるか私にもわからない。こう見えて欲深い人間だからね」 「だから?」 「君の寝こみを襲うかもしれない」  眠りを妨げられて不機嫌だったが、仁科のその言葉に、啓一は声を上げて笑った。 「お前が俺を襲う? 面白い、返り討ちにしてやるよ。本気じゃないなら止めておけ」 「本気だ。私の君への気持ちは本当に――」 「なら今やるか?」  啓一は挑発的に片眉を上げた。 「お前が本気なら、それこそ俺はさっきまで寝てたから、そこを襲えばいい。お前の俺への想いなんてそんなに深いものじゃないだろ? 親愛のようなものだ。何にせよ、ここで話していたら気が滅入りそうだ。俺の家に行くぞ。来るよな、仁科」  仁科は黙って頷いた。

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