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狂想 6-2
次に目が覚めたとき、孝司が感じたものは身体中を這い回る、おぞましい手のひらの汗ばんだ感触だった。
今はどこにいるのだろう。孝司は目蓋を持ち上げ周囲を確認しようとするが、自らの意志とは反対に身体は重く、まるで自分のものではないようだ。
神経を研ぎ澄ませる。そうすると全裸になった皮膚の表面にいくつかの水滴と、密閉された空間内に漂うむんわりとした湿気を感じ取れる。浴室だ。孝司は洗い場の床に、なかば片山が抱えるような形で寝かされていたのだ。
「はっ、ぁ……孝司……孝司……」
片山は孝司の意識が戻っているとは気づかずに、動かない身体を相手に不毛な愛撫を繰り返す。
屍姦のようだ、と他人事のように思った。
出会った頃のような瑞々しさが失われた身体であっても、片山は気にしないらしい。現在の孝司の姿が見えていない、と言ったほうが正しいのであろうか。
片山の右手は孝司の性器を扱き、左手は乳首や喉仏、口腔、さらには耳の穴までも侵食していく。これまでの暴行で、孝司が少しでも反応した個所を重点的に、片山は執拗に責め続けた。
「ああ、孝司……お前は本当に可愛い男だ……。ここをどうやって可愛がってほしいんだ? お前は淫猥だから、自分で慰めるだけじゃ足りないだろう?」
性器を弄んでいた右手が後腔へと伸びる。孝司の窄まりは一部が切れ、赤く充血していた。その傷にも気づかないほどに片山は妄執的に孝司を愛し、孝司もまた、その痛みに慣れつつあった。
悪循環が生み出す狂想曲は終わりを見せない。
「お前の恋人は、この俺だ」
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