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狂想 14-1

「どうして、あんたがここに……?」 「孝司、もう大丈夫だ。俺が助けてやる。安心しろ」 「どうして……」 「俺がすぐに助けてやる」  俺が。俺が。俺が。  そのときの孝司の脳裏には、自信家でプライドが高く、弟のことをゴミカスのようにしか思っていない啓一の姿がよぎった。  俺がなんとかしてやる。俺に任せればいい。俺の迷惑になるようなことはするな。  俺が、俺が、の連続だ。  そして――。  ――俺はお前とは違う。  何度も繰り返され、骨の髄にまで刻みつけられた呪詛の言葉。 「俺は……俺は……」  片山の腕の中で、孝司は小刻みに震える。仁科や啓一、片山の視線を一身に集め、孝司はぎろりと啓一を睨みつける。まるで手負いの獣のように。 「俺も、俺もお前とは違うっ! お前がっ、お前さえいなければ!」 「孝司……?」 「お前さえいなければ、俺はみんなに愛された! 母さんだけじゃない! 父さんにも愛された! 俺を見てくれた!」 「孝司、何を言っている?」 「黙れ! お前さえいなければ、俺はこんな想いをすることはなかった! サトシも俺を愛してくれた! 俺のサトシを、お前は奪ったんだ!」 「孝司!」 「黙れ黙れ黙れぇえええ!」  強靭な腕を振り切った孝司は片山の手から凶器を奪い取り、啓一に向かって突進した。刃先が肉体にめりこむ。返り血が飛び散る。復讐を遂げた孝司は薄く嗤い、顔を上げ、一瞬にして青ざめた。  見上げた先には愛する仁科が立っていたのだ。

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