7 / 134

5

あれから陽人とは、家や隠れ処ではお互い遊んだり、話したりした。 ただ、学校では言葉を交わす事は、一切しなかった。 遠藤達は俺が歯向かってからは、睨んだりしてきたりはするけど、何もしてこなくなった。 他の傍観者は 『あんなに仲良かったのにな』 『やっぱり、生徒会長とヤンキーじゃ、釣り合わない』 なんて、好き勝手に噂している。 そしてあの日からすぐ、陽人には彼女が出来た。 学校で一番美人だと言われてる、3年の先輩。 そんな美女にも負ける事のない、美丈夫な陽人。 サラサラの黒髪と、小さな輪郭。 その中にある、バランスのいいアーモンドアイに黒曜石のような瞳。 鼻筋の通った高い鼻。 いつも微笑んでいるみたいに、口角の上がった唇。 手足が長くて背もすらりと高い。 細身なのに肩幅がしっかりあって、筋肉もついていてスタイルが抜群に良い。 女子達がひそかに『王子様』とあだ名で呼んでるのも頷ける。 美男美女でとてもお似合いだったのに、3ヶ月もすると別れてしまった。 それでもすぐに、トップクラスの可愛い彼女が出来ては、3ヶ月もしないで別れてしまう。 遊び人じゃないけど、モテモテの陽人には絶え間なく彼女が出来た。 それでも長続きする事はなかった。 「陽人って飽き性なの?」 「そうじゃないって。彼女に“つまらない”とか“イメージと違った”て毎回フラれてばかりだよ」 「陽人がフッた事はないんだ」 「そっ。毎回、向こうからだよ。いい加減、凹む」 「女が贅沢なんじゃねぇの?裏表もないし、すげぇ優しいし、顔だけじゃなくて性格だって良いだろ。俺は陽人といると楽しいけどな」 「柚希が女の子だったら、マジで付き合いたい。子供の頃一目惚れしたくらい、俺の理想なんだけど。試しに、付き合わない?」 「ははっ、何言ってんの。男同士ないって」 「だから、冗談だって。でも、可愛いとは思ってる」 熱っぽい目を細めて俺を見つめ、髪を撫でられた。 俺が女だったら、完全に落ちてる。 真剣な顔でそんな事言われたせいか、顔が熱くて心音が激しくなる。 「やめろって!くすぐってぇよ!」 「本当、柚希って髪の毛、フワフワで柔らかい。目もクリクリと大きくて、猫みたいでかわいいよな」 「あー、小動物系の可愛いってやつだろ。よく言われるわ」 「えっ?誰に?」なんて、陽人が食いついてくる。 「美空の店に顔出した時にいる、おっさん」というと「危ないから気を付けろよ」なんて。 ありえない事言ってくるから、思わず吹き出した。 ◇ 気がつけば、中学3年の5月になっていた。 晴天が続き、毎日汗が吹き出すほど暑かった。 陽人は選挙で圧倒的得票数を得て、二度目も生徒会長に当選した。 サッカー部では、不動のエース。 3年は6月の県大会を最後に引退になる。 俺は一匹狼のヤンキー。 ヤンキーっていっても、いじめられない為の、張りぼてみたいなの。 だから、他のヤンキーや強い奴に絡まれないよう、 危険な場所や、遅い時間は出歩くのは回避している。 弱虫のヤンキーだ。 そういう臭覚と、身のこなしは素早い。 昔から走るのだけは、早かったし。 だからこの3年間、平穏無事に過ごす事が出来た。 そう、あの日まではーーー

ともだちにシェアしよう!