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「おはよう」 爽やかな朝の日差しに負けないくらい、眩しい笑顔の陽人が目の前にいた。 「ぉはよ……」 昨日の事を思い出すと、照れ臭くて目を逸らした。陽人に聞こえるかわからないくらい、小さな声で挨拶を返す。 「昨日の事だけどさ……素人が勝手に考えた治療だから、あまり深く考えないで。それで柚希との友情が壊れるのも嫌だし……」 ーーー『友情』ーーー そうだ。 陽人にとって、俺はただの『友達』 唯一無二の、大切な『親友』 だから、昨日の事に深い意味なんてないんだ。 ーーわかってる。わかってたけど…… 言葉にして言われると、胸が痛んだ。 ただ、俺が勝手に好きになっただけ。 陽人との関係を壊したくない。 だから、友達として陽人に嫌われないように側にいたい。 その為には、この気持ちを知られてはいけない。 「別に、壊れる訳ないじゃん。俺と陽人は何があっても親友だろ」 「良かった……ちょっと不安だった」 「陽人が自信ないなんて珍しい」 「俺だっていつも自信がある訳じゃないよ」 普段あまり見る事がない、陽人の少し自信なさげな顔が、『何があっても親友』という言葉で安心したように明るくなった。 その言葉に喜ぶ陽人の笑顔が、今は辛い。 リハビリなんてなかったみたいに 今まで通り普通に喋って、 笑って、ご飯食べて。 漫画読んだり、ゲームしたり、 だらだらしたり、ゴロゴロしたり。 友達として普通に過ごした。 リハビリをする前から、二人の距離感は元々近かった。 小さい頃から一緒だったから、余計なのかも。 体に触れたり、 いつもくっついてたり、 顔はキスが出来そうなくらい、近い時もある。 今までは何でもなかった距離感に、いちいちドキドキしてしまう。 心音が聞こえるんじゃないかって、不安になるくらい、 本当に俺と陽人の距離は近い。 「……もう、こんな時間?……明日病院だから、学校は休みなんだ。柚希が学校終わった頃、また遊びに来るよ」 俺の胡座の上に頭を乗せ、仰向けで微睡んでいた陽人。 ふと目を覚まし、時計を見て少し慌ててる。 このままじゃ、帰ってしまう。 「もう少し、寝とけば。疲れてるみたいだし」 あくびをして、まだ眠そうにしてる陽人を引き止める。 ーー離れたくない……一緒にいたい…… 陽人の事を心配するフリをして、狡い事言ってる。 「うん、そうする。あと少し、柚希の膝借りるね」 ーー良かった…まだ陽人と一緒にいられる…… ほんの少しでも長く、二人で過ごせるという事が、とても嬉しかった。 膝の上で目を瞑り、子供のようにうとうとし始める。 すぐにスースーと寝息を立て、眠ってしまった。 安心して眠る姿に、心を許してくれてるって感じがして、思わず破顔した。 陽人といると、笑う事が出来た。 あんな事があって、心が死んだみたいになったのに、一緒にいると心が温かくなって満たされる。 愛しいと思った。 足の上にある、重みと温もりが愛しい。 無防備な陽人の唇を、指でなぞる。 手入れされていて、滑らかな柔らかい唇。 ーーキス、したい………… 気付かれないように、 目を覚まさないように、 そっと唇を重ねた。 なんとなく、陽人がピクッて動いたような気がして、慌てて離れた。 ーー起きてない…?よな…… 寝息は立ててるし、目も瞑ったままだ。ぐっすり寝ているみたい。 ーー気付いてない…良かった…… もう一度、キスをした。 今度は長い時間、唇を合わせた。 このまま、 このまま、ずっと 時間(とき)が止まればいいのに…………

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