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62 ~稀瑠空 side~
ーーーー生徒会室ーーーー
連日集まってようやく完成した、生徒会総会の資料のチェックが一通り終わった。
ハル先輩は部活やユズ先輩の事があるから、なかなか出席出来なかったけど、顔を出した時の、仕事の早さと正確さには、いつも驚かされた。
明日には製本しないと間に合わないから、今の今まで時間がかかってしまった。
時計を見ながら、決勝戦は後半戦からの観戦って事にして、全員急ピッチで仕事をこなしていた。
「資料の方は、これで問題なさそうだね」
「あとは、明日陽人に確認してもらって、顧問に最終確認してもらったら、印刷していよいよ製本だな」
「いやァ、マジで疲れたっすよォ~」
「おまえ、何かやったのか?」
「俺も計算したり、チェックしたり……色々やったじゃないっすかァ。ひどいっすよォ、征爾さんっ」
「ケンティも頑張ってたんだから、せいじぃは意地悪言わないのぉ」
「いやー、流石なっちゃんわかってるゥ。俺の事、身も心も癒してよォ」
「成都に近付くな!話しかけるな!」
いつもの生徒会の風景が広がる。セイジ先輩と絢斗は仲が悪くて、ナツ先輩がセイジ先輩を宥めて。そして女たらしの絢斗が、ナツ先輩にちょっかいを出し、セイジ先輩にキレられる。
「セイジ先輩、絢斗の事は後で殴っておきます。とりあえず決勝戦、急いで行かないと」
「そうだな。もう、前半戦が始まってるしな」
「今からだとぉ、14時18分のバスに乗れば、後半戦が始まった頃に合うかなぁ」
「あと15分後かァ。バス停までは、全然余裕っすねェ」
「ヒロ先輩、顧問に呼び出されたっきり……まだなのかな……」
「あの顧問に捕まったら、話が長いからな。解放してもらえないんだろう」
「顧問は話し出したら止まらないから、一生捕まったままだよぉ。僕がひろむの事、連れ戻してくる」
「俺が呼んで来ますよォ。なっちゃんは俺のボトルに、たっぷり愛情注いでねっ」
「絢斗のは俺が淹れる」
「ちよっ……征爾先輩のは、いらないっす」
「安心しろ。おまえの茶に愛情なんて、一ミリも入れてない」
資料作りが一段落ついて解放された気分になり、バス停へ行くまでの僅な間羽を伸ばす。
のんびりお茶をしてる時間はなかったから、ナツ先輩がみんなのマイボトルに、リフレッシュ効果のあるペパーミントティーを淹れてくれている。それをセイジ先輩が手伝っていた。
他愛もない話で盛り上がってると、パソコンのメール通知音が小さく鳴った。また、生徒会にファンレターみたいなメールが届いたのかと、ディスプレイを覗いた。
ヒロ先輩の代わりに、パソコンを操作する。生徒会のSNSへ、DMが送られてきたみたいだ。「DM届いてます」ってみんなに伝え、DMを開いた。
「何だよ……これ……」
「稀瑠空、どうしたァ?」
怪訝そうな俺の顔に、みんながパソコンを囲んで画面を覗いた。
《ーーー生徒会の皆様へーーー
タイムリミットは、有働陽人の試合が終了するまで。それまでに見つけないと、仲間が大変な目にあうよー(*≧∀≦*)》
怪文書の後、立て続けに二つのURLが送られてきた。アドレスは有名な画像共有サイトの物だ。クリックするとそこには……
一枚目は目隠しをされ椅子に拘束された、怯えてる様子のヒロ先輩の画像が。
二枚目は腕がだらんとぶら下がり、足は不自然に曲がって、痣だらけであちこちから血を流し、ぐったりとしているトモ先輩の画像が。
残忍な様子が、ディスプレイに鮮明に映し出された。
急いでパソコンから、ユズ先輩のGPSの位置を確認する。
「動いてるから、移動しているみたいだけど…今って、大事な試合中だよね……?」
「ゆずゆずに電話かけてるけど、繋がらないよぉ……」
「友紀も電話に出ない……」
「大夢にも繋がんねェ……なんだよ、どうなってんだよォ!」
脳裏にずっと引っ掛かり、気になっていた事を思い出す。
「しーっ」
口許に人差し指を当て、沈黙を促す。
混乱し慌ただしかった生徒会室が、一瞬で静まり返った。
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