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子猫達の姿を見た、ヤンキーの何人かがたじろいだ。
「木村さん……女相手ってのは……ちょっと……」
「あ゛ぁ゛?」
「それに……あの3人、ヤンキーの間で、すげー人気で……俺…前から、美咲狙ってたんです……」
「はぁ?」
「俺は麻奈に、マジ惚れしてて……木村さん、すみませんっ!」
「マジ、悪ぃっす!芽郁の事、ずっと好きだったんで……」
「お、俺は、愛華ちゃんの、ファンだから……」
「ふざけんな!色ボケがっ!」
謝罪の言葉を口にしながら、5人が逃げるように戦線離脱した。
「私達とあとで、グループデートしよぉ。いっぱい、楽しもーねぇ」
愛華が上目遣いで猫なで声を出し、戦闘放棄したヤンキー達に愛くるしく微笑み、連絡先の書いてある名刺を配り始めた。
男達はデレデレと嬉しそうにしてる。
その様子を見ていた残りのヤンキーのうち、更に4人が離脱し、手を振る愛華の方へ駆け寄っていった。
残ったのは、怒りで顔を真っ赤に染める木村と、武闘派の屈強そうな3人だ。
「顔しか取り柄のないテメェの顔を、ぐちゃぐちゃに潰してやるぜ!」
怒りに震えた声でがなりながら、殴りかかってきた木村をひらりと躱す。更に襲ってきたもう一人の顎を、下から拳で殴り付けた。フラつきながら男は倒れ、ピクリとも動かない。
上手く、急所に入ったみたいだ。
残り三人。
「女捕まえて、脅した方が早いぜ」
一人の男が仔猫達に襲いかかる。
三人から、腹パンと尻キックと顔パンされ、男は呻き声を上げる。
「木村さん、女強いっす」と男は慌ててる。
仔猫達は俺と一緒にいたいからって、同じジムでキックボクシングを習ってる。ジムでもトップクラスの強さで、プロにならないかって誘われてるくらいだ。
混乱した男は「あの女なら弱そう」と、今度は愛華に襲いかかった。
ドゴッと鈍い音が鳴ると、男の喉元をバッグが直撃した。口をはくはくさせながら倒れた男の、臀部を刺すように愛華はピンヒールで踏みつけた。
「糞客やっつける時にも、ハイブランドのバッグとピンヒールは役に立つのよぉ」
男に向け振り回した重厚感のある高級バッグを、何事もなかったように軽々と肘に掛けて、余裕そうに営業スマイルを浮かべる。
残りは二人だ。
「あとは俺がやるからァ。愛華は友さんを看てくれない?仔猫達は失神してる奴等に備えながら、友さん達をガードしてやってェ」
俺の言葉に頷き、指示通りにみんなは動く。
友さんを救出し、仔猫や愛華に何もなかった事に安堵して、一瞬だけ気が緩んだ。
その隙を突かれ、残ってる男に背後から羽交い締めにされた。
木村がニヤけながら、重いパンチで左右交互に殴り付けてくる。頬がじんじんと痛み、口の中は切れて鉄の味が広がる。
「ははっ!ご自慢の顔が、台無しだな」
「あー、お陰様でェ、目ェ覚めたわァ……」
「強がんなよ!糞ヤリチ……んがっ!」
木村が言い終える前に、脛を蹴り上げると呻き声を漏らして踞った。それを見て怯んだ後ろの男の顔面に、思いっきり頭突きをし、勢いよく体を返してこめかみに一撃を加える。男は白目を剥きながら、ノックダウンした。
残りは木村、ただ一人だ。
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