76 / 134

73

子猫達の姿を見た、ヤンキーの何人かがたじろいだ。 「木村さん……女相手ってのは……ちょっと……」 「あ゛ぁ゛?」 「それに……あの3人、ヤンキーの間で、すげー人気で……俺…前から、美咲狙ってたんです……」 「はぁ?」 「俺は麻奈に、マジ惚れしてて……木村さん、すみませんっ!」 「マジ、悪ぃっす!芽郁の事、ずっと好きだったんで……」 「お、俺は、愛華ちゃんの、ファンだから……」 「ふざけんな!色ボケがっ!」 謝罪の言葉を口にしながら、5人が逃げるように戦線離脱した。 「私達とあとで、グループデートしよぉ。いっぱい、楽しもーねぇ」 愛華が上目遣いで猫なで声を出し、戦闘放棄したヤンキー達に愛くるしく微笑み、連絡先の書いてある名刺を配り始めた。 男達はデレデレと嬉しそうにしてる。 その様子を見ていた残りのヤンキーのうち、更に4人が離脱し、手を振る愛華の方へ駆け寄っていった。 残ったのは、怒りで顔を真っ赤に染める木村と、武闘派の屈強そうな3人だ。 「顔しか取り柄のないテメェの顔を、ぐちゃぐちゃに潰してやるぜ!」 怒りに震えた声でがなりながら、殴りかかってきた木村をひらりと躱す。更に襲ってきたもう一人の顎を、下から拳で殴り付けた。フラつきながら男は倒れ、ピクリとも動かない。 上手く、急所に入ったみたいだ。 残り三人。 「女捕まえて、脅した方が早いぜ」 一人の男が仔猫達に襲いかかる。 三人から、腹パンと尻キックと顔パンされ、男は呻き声を上げる。 「木村さん、女強いっす」と男は慌ててる。 仔猫達は俺と一緒にいたいからって、同じジムでキックボクシングを習ってる。ジムでもトップクラスの強さで、プロにならないかって誘われてるくらいだ。 混乱した男は「あの女なら弱そう」と、今度は愛華に襲いかかった。 ドゴッと鈍い音が鳴ると、男の喉元をバッグが直撃した。口をはくはくさせながら倒れた男の、臀部を刺すように愛華はピンヒールで踏みつけた。 「糞客やっつける時にも、ハイブランドのバッグとピンヒールは役に立つのよぉ」 男に向け振り回した重厚感のある高級バッグを、何事もなかったように軽々と肘に掛けて、余裕そうに営業スマイルを浮かべる。 残りは二人だ。 「あとは俺がやるからァ。愛華は友さんを看てくれない?仔猫達は失神してる奴等に備えながら、友さん達をガードしてやってェ」 俺の言葉に頷き、指示通りにみんなは動く。 友さんを救出し、仔猫や愛華に何もなかった事に安堵して、一瞬だけ気が緩んだ。 その隙を突かれ、残ってる男に背後から羽交い締めにされた。 木村がニヤけながら、重いパンチで左右交互に殴り付けてくる。頬がじんじんと痛み、口の中は切れて鉄の味が広がる。 「ははっ!ご自慢の顔が、台無しだな」 「あー、お陰様でェ、目ェ覚めたわァ……」 「強がんなよ!糞ヤリチ……んがっ!」 木村が言い終える前に、脛を蹴り上げると呻き声を漏らして踞った。それを見て怯んだ後ろの男の顔面に、思いっきり頭突きをし、勢いよく体を返してこめかみに一撃を加える。男は白目を剥きながら、ノックダウンした。 残りは木村、ただ一人だ。

ともだちにシェアしよう!