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77 ~柚希 side~
みんなのいる場所へーーー
その強い気持ちだけが、強張った体を起動させる。
力の限り床を蹴って、全速力で走った。
固く閉じた扉まで、どうにか辿り着く。
僅かだけど、柊から距離を取る事に成功した。
ーー大丈夫。このままなら、逃げられる……だから、落ち着け……!
震える手で鍵を開けようとするけど、指先が滑って力が入らない。
ほんの数秒の事なのに、やけに長く感じる。
背後から、柊が静かに足音を立てて、近付いてくる。
それでもなんとか、鍵を回転させ解錠し、勢いに任せドアを思いっきり開いた。
「ーーーー!!!」
扉の向こうには、不良グループの2年の斉木と手下5人が、壁のように立ちはだかっていた。
「おまえの事、簡単に逃がすわけねぇだろ」
柊が放つ非情な宣告に愕然とし、体が硬直して動けないでいると、斉木に腕を捕まれた。
「樋浦さん、どうしますか?」
「斉木はここに残って。2人はドア周辺に。他にも、この周りにいるんだろ?」
「樋浦さんに言われたとおり、少人数のグループに分けて、隈無く配置してあります」
「じゃあ、残りの3人には……」
後ろからゆっくり柊は近付き、だらんと力なく持っていたバッグを奪い取った。
「これに、スマホとGPS発信器入ってるから、適当に持ち歩いて。動き回ってばかりだと怪しまれるから、試合中はなるべく観客席から離れるなよ」
「はい」
柊の指示に従い、手下の不良3人がバッグを受け取って、観客席の方へと歩いて行った。
頭の中が真っ白で、もう、どこをどう歩いているのかわからない。
ただ、斉木に腕を引っ張られて、それについていってるだけで……
気付けばトイレの中へ戻され、柊が目の前に立っていた。
「柚希が俺に逆らうなんてな。全然、考えてもなかった……躾直さねぇとな……」
マネキンのように整った美しい顔は、無表情で冷たくて、まるで血が通ってないみたいだった。
ゾクッとする程冷酷な目で、射るように俺を見る。
スラリとした指でウィッグの長い髪の、小さな束を掬い上げた。
「せっかく、可愛い格好してるから、優しくしてやりたかったのに……」
光に透け淡い色合いになった髪を、ふわりと離した。そのまま、長い指は頬を撫で、顎を掴み、親指で唇をなぞると、ゆっくりと離れていった。
「斉木、俺のでやって」
スマホを操作し、斉木の方へそれを差し出した。
斉木は頷いて柊に近寄ると、スマホを受け取り、カメラのレンズを俺の方へ向けた。
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