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目覚めると、鳥籠のような部屋の中だった。
ここに来てからは多分、3日くらいは経っている。
悪夢のような夢は、本当の事で……
俺は柊に拐われて、
養子縁組をして夫婦となり、
……そして、監禁されている。
首元に手をやると、無機質な皮の首輪と冷たい鎖が指に触れた。耳にはイヤホンが付いていて、今も柊と電話が繋がったままだ。
嫌でもこれが現実だって、改めて実感させられる。
ぼんやりとしながら寝そべってると、勝手に涙が出てきた。
寝返りを打ち、鼻を啜ってると、イヤホンから『起きたの?』と声が聞こえた。
「んっ……」
『泣いてるの?』
「んっ……」
『俺がいなくて、寂しい?』
「…………うん」
何て答えれば、柊が不機嫌にならないか……
怒らせないような答を導き出し、相槌を打つ。
『もう少しで着くから。メーロウのプリンも、ちゃんと買ってきたよ』
「ありがとう……待ってる」
返事はなかったけど、柊が機嫌が良さそうなのは伝わってきた。
無言のまま、柊が到着するまで電話は繋がっている。
ドアの開閉音がし、「ただいま」と先ほどまでの電話の主が部屋に入ってきた。
手にはメーロウのロゴが入った、茶色の紙袋を提げている。
俺に近付くと、鎖とイヤホンを外した。
手を引かれながら、リビングへ移動する。
ソファーに腰かけた柊は、グイッと俺の手を引っ張り、足の間に座るように促しては強引に座らせる。
「こんなに軽いんじゃ、倒れるぜ。ほら、食べて」
メーロウの黄身の濃い固めのプリンを、プラスチックのスプーンにのせ、俺の食べる速度に合わせ、ゆっくりと食べさせる。
食欲がなく、食べるのに慣れない体は、柔らかいプリンでもなかなか飲み込めなかった。
その様子を見ながら、急かすわけでも怒るわけでもなく、ただじっと待っている。
背中に伝わる温かい体温に、気ばかりが焦った。
「俺、食べるの遅いから……柊は自分の食べて」
「もう一個も柚希の分だよ。冷蔵庫に冷やしておくから、明日食べな。ゆっくりで構わない。怒らねぇから、少しずつ食べて」
「ごめん……」
「謝るなよ……謝るなら、食うのに口動かせよ」
優しく頭をぽんぽんとする。
ーーあんなに酷い事したのに……俺が食べられないのも、柊のせいなのに……甘やかしたり、優しくしたりするなよ……
卑怯だ……
柊の思い通りに心を操られてるみたいで、悔しかった。
柊の事は怖いと思う。
束縛や監視されるのは、苦しいし逃げたい。
それなのに……
年上だから、甘やかすのが上手で、
壊れ物みたいに、大切にしてくれて、
包み込むように、優しくしてくれる。
嫌なのに……
嫌いになれなかった。
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