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SHGのリーダーで、樋浦建設の次期跡取りである樋浦柊の逮捕のニュースは、地元のローカルテレビや新聞を、連日のように騒がし埋めつくしていた。
そのニュースの中に、社長を務める父親が会社を辞任したと報道されていた。暁の父親が暫くの間、代理で社長を務めるみたいだ。
柊の父親は俺の家に謝罪に来て、深々と頭を下げ何度も謝ってきた。
父親が代理で手続きをして、俺と柊の養子縁組は解消となり、元の『内海柚希』へ戻る事が出来た。
美空に「本当にいいの?」って聞かれたけど、俺は被害届は出さなかった。
柊に脅された形で付き合っていた事を知った美空は、何度も泣きながら謝ってきた。
それだけだって美空を傷付けたのに、自分の身代わりにレイプされただなんて知ったら、美空を苦しめてしまう。
それに俺の中では、とっくに柊の事を許していたから。
逮捕された分の罪を償ってくれれば、それだけで十分だった。
◇
夏休みが明け、3年は本格的に受験シーズンへ突入だ。
高校の費用は、陽人の父親が資金援助してくれる事になり、全日制の高校へと進路を変更した。
返済はいらないと言われたけれど、一方的にっていうのは俺が嫌だから、働いたら少しずつ返していこうと思ってる。
友紀は手術の末、1ヶ月程入院してから退院する事が出来た。
大怪我をした左足は思うように動かなくて、暫くリハビリに通わなくちゃいけないみたいだ。
ギプスをして松葉杖をついて歩く姿は、不自由そうで痛々しくて……
学校では出来る限り一緒に行動して、友紀の手助けをした。
「俺のせいで……本当に、ごめん」
「謝るなよ。柚希を助けたいってのは、俺が決めた事だ。それに……今回の事がきっかけで、すげー美人で、可愛い彼女が出来たんだ。今度、紹介するなっ」
はにかみながら満面の笑みを浮かべる友紀から、幸せいっぱいな様子が伝わってきた。
10月には生徒会長の選挙が行われ、立候補した稀瑠空が圧勝で会長に当選した。
選挙運動の時、陽人は稀瑠空の応援演説をしたり、手伝ったりしていた。
陽人と稀瑠空の、青葉東中の人気ツートップが並んで歩けば、当然のように学校中は大騒ぎになった。
とにかく、ギャラリーの数が凄まじくて……
それぞれの親衛隊がピリピリしながら、列の整備や誘導をして忙しそうにしていた。
そんな中、スマホで稀瑠空と陽人のツーショットを隠れて撮影した生徒が、SNSへ勝手に投稿してしまった。
《神ツーショット》
《眼福》
《稀瑠空、めっちゃ美人!隣のイケメン
は、モデルなの?》
《隣のイケメン、今日から私の推しになり
ました》
と山のようにコメントが付き、あっという間に拡散してしまった。
あまりの反響の大きさに、芸能プロダクションから陽人へのスカウトが殺到し、全国各地に陽人のファンクラブが出来てしまった程だ。
卒業式の日。
陽人が卒業生代表で答辞を読み上げた。
美しくも感動的な素晴らしい答辞に、卒業生も在校生も、先生も保護者も……
みんなが涙を流していた。
人気者の陽人は式が終わると、男女問わず沢山の生徒から声をかけられたり、ラブレターをもらったり……
次々と人が訪れては、忙しなかった。
「陽人先輩、少しだけ、時間良いですか?」
「こんな事、聞いてごめんね……告白…かな?」
「えっ……はっ、はい」
陽人が隣に立つ俺の手首を掴み、そのまま手を繋いできた。
「俺、大切な人がいるから……ごめんね」
「あっ……こちらこそ、すみませんでした。お幸せに!」
女の子はそそくさと逃げるように、帰って行った。
「話聞いてあげるくらいは、した方がいいんじゃねーの?」
「柚希に嫌な思いさせてまで、人に優しく出来ないよ…………俺って、器が小さいよな……」
勇気を出して告白しようとしている相手に、優しい陽人が心苦しいながらも、俺の為に断ってるのはわかっている。
「そんな事ねぇよ。陽人は、器デカいって。まっ、色々と……ありがと」
「ふふっ、柚希の言葉で元気出た……じゃあ、母さん達の所へ行こうか?」
「だな。久美さんも美空も待ってるからな」
「みんなでご飯行くの、楽しみだな。明日からは、引っ越しの準備かぁ。暫く、大忙しだね」
「俺は荷物少ないから、だいたいまとめてある。終わったら、陽人の荷造り手伝うよ」
「ありがとう、助かる」
陽人は白金市の、一ノ瀬高校へ。
俺は一ノ瀬高校近くの、商業系の男子高へ進学する事が決まった。
陽人は本当は、学生寮へ住む筈だった。
ただ、思ったより俺の心の傷が深く、PTSDに悩まされて……
それを癒す為にも、陽人と一緒のが良いだろうって親達は考えて、二人で白金市内のマンションで暮らす事になった。
美空と久美さん、陽人の父親には俺達が恋人として付き合う事は、既に報告をしてあり公認の仲だ。
生涯一緒にいるって事も知っていて、理解してくれた上に応援もしてくれている。
美空は柊の時既に、同性との付き合いに寛容だったから、全く問題はなかった。
ただ、陽人の両親は反対したり、難色を示すんじゃないかって……
不安だったけれど、意外にあっさりと認めてくれた。
征爾と成都は親に認めてもらえるまで、すごく大変だったみたいだし……
俺達はたまたま、運が良かっただけなんだと思った。
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